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会計上の見積りの注記

当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがあると識別した項目については、会計上の見積りの内容を表す項目名を注記します(会計上の見積りの開示に関する会計基準第6項)。

会計上の見積りの開示は独立の注記項目とし、識別した項目が複数ある場合は、それらの項目名は単一の注記として記載します(同会計基準第6項なお書き)。

注記事項

財務諸表には、会計上の見積りの内容を表す項目名に加えて、以下の内容を注記します(会計上の見積りの開示に関する会計基準第7項)。


  1. 当年度の財務諸表に計上した金額
  2. 会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報

上記事項の具体的な内容や記載方法(定量的情報もしくは定性的情報、またはこれらの組み合わせ)については、財務諸表利用者が、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目における会計上の見積りの内容を理解できるように各企業が判断する必要があります。

なお、「1」および「2」の事項について、会計上の見積りの開示以外の注記に含めて財務諸表に記載している場合には、会計上の見積りに関する注記を記載するにあたり、当該他の注記事項を参照することにより当該事項の記載に代えることができます(同会計基準第7項なお書き)。このような取扱いとなっているのは、個々の会計基準等によりすでに注記が求められている場合に注記の重複を避けるためです(同会計基準第28項)。

財務諸表利用者の理解に資するその他の情報

会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報としては、例えば以下のようなものがあります(会計上の見積りの開示に関する会計基準第8項)。


  1. 当年度の財務諸表に計上した金額の算出方法
  2. 当年度の財務諸表に計上した金額の算出に用いた主要な仮定
  3. 翌年度の財務諸表に与える影響

上記の「1」および「2」は、財務諸表利用者が当年度の財務諸表に計上した金額について理解したうえで、企業が当該金額の算出に用いた主要な仮定が妥当な水準または範囲にあるかどうか、また、企業が採用した算出方法が妥当であるかどうかなどについて判断するための基礎となる有用な情報となる場合があります(同会計基準第29項)。

上記の「3」は、当年度の財務諸表に計上した金額が翌年度においてどのように変動する可能性があるのか、また、その発生可能性はどの程度なのかを財務諸表利用者が理解するうえで有用な情報となる場合があります(同会計基準第30項)。

なお、上記「1」から「3」は例示であるため、注記事項のチェックリストとして使うものではありません。注記事項は、財務諸表利用者が会計上の見積りの内容を理解できるように記載する必要があります(同会計基準第31項)。

個別財務諸表における注記

会計上の見積りは、連結財務諸表と個別財務諸表で同様に開示することが原則です。ただし、連結財務諸表を作成している場合は、注記の重複を避けるため、「会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報」の注記事項について連結財務諸表における記載を参照することができます(会計上の見積りの開示に関する会計基準第9項および第32項)。

なお、識別した項目ごとに、当年度の個別財務諸表に計上した金額の算出方法に関する記載をもって「会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報」の注記事項に代えることができます。この場合であっても、連結財務諸表における記載を参照することができます(同会計基準第第9項なお書き)。

注記例

重要な会計上の見積りの注記については、例えば以下のように行います。

(重要な会計上の見積り)
1.貸倒引当金
(1)当事業年度の財務諸表に計上した金額
当事業年度の貸借対照表に貸倒引当金を5,000千円計上しております。
(2)その他の情報
債権の貸倒れによる損失に備えるため、貸倒実績率を基礎とした貸倒引当率により回収不能見込額を計上しております。

2.繰延税金資産の回収可能性
(1)当事業年度の財務諸表に計上した金額
当事業年度の貸借対照表に繰延税金資産を12,000千円計上しております。
(2)その他の情報
当社は、毎期安定して税引前当期純利益を計上しております。また、翌事業年度以降も同水準の安定した税引前当期純利益を計上できると仮定しております。そのため、将来の税金負担額を軽減すると認められる将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があるものとして見積もっております。なお、将来の市場動向や経済環境の変化が、翌事業年度の財務諸表に計上する繰延税金資産および法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。