会計上の見積りの開示に関する会計基準
会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準では、会計上の見積りを資産および負債や収益および費用等の額に不確実性がある場合において、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて、その合理的な金額を算出することと定義しています(会計上の見積りの開示に関する会計基準第3項)。
会計上の見積りの開示目的
財務諸表の作成過程では、財務諸表に計上する項目の金額を算出するにあたり、会計上の見積りが必要となるものがあります。
会計上の見積りは、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて合理的な金額を算出するものですが、財務諸表に計上する金額に係る見積りの方法や、見積りの基礎となる情報が財務諸表作成時にどの程度入手可能であるかは様々です。そのため、財務諸表に計上する金額の不確実性の程度も様々となります(会計上の見積りの開示に関する会計基準第15項)。
このような理由から、財務諸表利用者が、財務諸表に計上した金額のみでは、当該金額が含まれる項目が翌年度の財務諸表に影響を及ぼす可能性があるかどうかを理解することは困難です。
そこで、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるも ののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスク(有利となる場合および不利となる場合の双方が含まれる)がある項目における会計上の見積りの内容について、財務諸表利用者の理解に資する情報を開示することを目的として、会計上の見積りの開示に関する会計基準が公表されました(同会計基準第4項)。
ここで、会計上の見積りの開示を「翌年度以降」ではなく「翌年度」の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目としているのは、以下の理由からです(同会計基準第19項)。
- 開示に係る期間が長くなればなるほど、開示が必要な項目の範囲は広がり特定の資産または負債について行われる開示は具体的なものではなくなっていく。
- 期間が翌事業年度中を超える場合には、その他の開示によって最も目的適合性のある情報を不明瞭なものにしてしまうことがある。
開示の原則
翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目は、企業によって異なります。そのため、個々の会計基準を改正して会計上の見積りの開示の充実を図ることはせず、会計上の見積りの開示について包括的に定めた会計基準において原則(開示目的)を示すこととしています。
このような理由から、会計上の見積りの開示に関する会計基準では、開示する具体的な項目およびその注記内容については当該原則(開示目的)に照らして判断することを企業に求めることが適切としています(同会計基準第16項)。
したがって、会計上の見積りの具体的な開示内容は、個々の企業が開示目的に照らして判断することになります(同会計基準第14項)。