会計上の見積りにおける開示する項目の識別
会計上の見積りの開示を行うにあたり、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目を識別します。識別する項目は、通常、当年度の財務諸表に計上した資産および負債です(会計上の見積りの開示に関する会計基準第5項)。
また、翌年度の財務諸表に与える影響を検討するにあたっては、影響の金額的大きさおよびその発生可能性を総合的に勘案して判断します(同会計基準第5項また書き)。
項目の識別における判断
会計上の見積りの開示に関する会計基準では、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目を識別して開示することとしています。
しかし、会計基準では、何と比較して影響の金額的な大きさを判断するのか、どの程度の影響が見込まれる場合に重要性があるとするのかについて、具体的な判断のための規準を詳細に定めることはしていません。これは以下の理由によります(会計上の見積りの開示に関する会計基準第22項)。
- 財務諸表に計上する金額に係る見積りを行う項目や、見積りの方法が様々であることから、ある場合には有用な情報を開示することになっても、他の場合には有用な情報を開示することにならないなど、すべての状況において有用な情報を開示するようにこれを定めることは困難である。
- 会計上の見積りが翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスク がある項目は、経営上の重要な項目であり、会計基準において判断のための規準を詳細に定めなくとも、各企業で行っている会計上の見積りの方法を踏まえて開示する項目を識別できる。
したがって、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目かどうかは、個々の企業で判断することになります。
識別する項目
識別する項目は、通常、当年度の財務諸表に計上した資産および負債です。
しかし、開示するかどうかの判断は、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがあるものに着目して行います(会計上の見積りの開示に関する会計基準第23項)。例えば、当期の財務諸表では固定資産の減損損失を認識しなかったとしても、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクを検討したうえで、当該固定資産を開示する項目として識別する可能性があります。
また、以下の場合についても、開示する項目として識別することができます(同会計基準第23項なお書き)。
- 翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある場合には、当年度の財務諸表に計上した収益および費用、ならびに会計上の見積りの結果、当年度の財務諸表に計上しないこととした負債。
- 注記において開示する金額を算出するにあたって見積りを行ったもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある場合。
なお、直近の市場価格により時価評価する資産および負債の市場価格の変動は、会計上の見積りに起因するものではないため、項目を識別する際に考慮しません(同会計基準第24項)。
識別する項目の数
識別する項目の数は、企業の規模および事業の複雑性等により異なると考えられますが、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目を識別することから、比較的少数の項目を識別することになると考えられます(会計上の見積りの開示に関する会計基準第25項)。