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関連当事者の重要性の判断基準

財務諸表関連当事者の開示を行う場合には、関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針第12項から第20項に定める重要性の判断基準に従う必要があります。

関連当事者の重要性の判断に係るグループ区分

法人または個人の別、支配または被支配の別、影響力の度合などに基づき、関連当事者は以下に示す4つのグループに区分します(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針第13項)。


  1. 親会社および法人主要株主等
  2. 関連会社等
  3. 兄弟会社等
  4. 役員および個人主要株主等

開示に際しては、各グループに適用される重要性の判断基準(関連当事者が法人の場合および関連当事者が個人の場合)に従って開示の要否を判定し、開示を要する事項について当該各グループ順に並べて開示します。

親会社および法人主要株主等

親会社および法人主要株主等は、財務諸表作成会社の上位に位置する法人のグループで、以下がその例です(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針第13項(1))。


  1. 親会社
  2. 財務諸表作成会社が他の会社の関連会社である場合における当該他の会社(その他の関係会社)および当該その他の関係会社の親会社
  3. 財務諸表作成会社の主要株主(法人)

関連会社等

関連会社等は、財務諸表作成会社の下位に位置する法人のグループで、以下がその例です(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針第13項(2))。


  1. 子会社
  2. 関連会社および当該関連会社の子会社
  3. 従業員のための企業年金(企業年金と会社の間で掛金の拠出以外の重要な取引を行う場合に限る。)

兄弟会社等

兄弟会社等は、財務諸表作成会社の上位に位置する法人の子会社のグループで、以下がその例です(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針第13項(3))。


  1. 財務諸表作成会社と同一の親会社をもつ会社
  2. その他の関係会社の子会社
  3. 財務諸表作成会社の主要株主(法人)が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社およびその子会社

役員および個人主要株主等

役員および個人主要株主等は、財務諸表作成会社の役員・個人主要株主等のグループで、以下がその例です(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針第13項(4))。


  1. 財務諸表作成会社の主要株主(個人)およびその近親者
  2. 財務諸表作成会社の役員およびその近親者
  3. 親会社の役員およびその近親者
  4. 重要な子会社の役員およびその近親者
  5. 上記「1」から「4」に掲げる者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社およびその子会社

重要性の判断

関連当事者との取引について、親会社および法人主要株主等関連会社等兄弟会社等の法人グループ、役員および個人主要株主等の個人グループに区分して、以下に基づいて重要性の判断を行います(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針第14項)。


  1. 関連当事者が法人の場合
  2. 関連当事者が個人の場合
  3. 資金貸借取引、債務保証等および担保提供または受入れ
  4. 外注先等への有償支給取引の取扱い

この判断に際しては、原則として各関連当事者との取引(類似・反復取引についてはその合計)ごとに行います。例えば1つの取引について売上高は重要であるが、売掛金残高には重要性がない場合においても、売上高および売掛金残高の両者の開示が必要となることに留意しなければなりません。

関連当事者が法人の場合

関連当事者が法人グループである場合、連結損益計算書項目(個別財務諸表では損益計算書項目)に属する科目に係る関連当事者との取引、連結貸借対照表項目(個別財務諸表では貸借対照表項目)に属する科目の残高およびその注記事項に係る関連当事者との取引ならびに債務保証等および担保提供または受入れが開示対象になります(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針第15項)。

連結損益計算書項目(損益計算書項目)に属する科目に係る関連当事者との取引

連結損益計算書項目(損益計算書項目)に属する科目に係る関連当事者との取引についての重要性の判断基準は以下の通りです(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針第15項(1))。


  1. 売上高、売上原価、販売費および一般管理費
    売上高または売上原価と販売費および一般管理費の合計額の10%を超える取引

  2. 営業外収益、営業外費用
    営業外収益または営業外費用の合計額の10%を超える損益に係る取引(その取引総額を開示し、取引総額と損益が相違する場合には損益を併せて開示)

  3. 特別利益、特別損失
    1,000万円を超える損益に係る取引(その取引総額を開示し、取引総額と損益が相違する場合には損益を併せて開示)

連結貸借対照表項目(貸借対照表項目)に属する科目の残高およびその注記事項に係る関連当事者との取引ならびに債務保証等および担保提供または受入れ

連結貸借対照表項目(貸借対照表項目)に属する科目の残高およびその注記事項に係る関連当事者との取引ならびに債務保証等および担保提供または受入れについての重要性の判断基準は以下の通りです(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針第15項(2))。


  1. その金額が総資産の1%を超える取引

  2. 資金貸借取引、有形固定資産や有価証券の購入・売却取引等については、それぞれの残高が総資産の1%以下であっても、取引の発生総額(資金貸付額等)が総資産の1%を超える取引(ただし、取引が反復的に行われている場合や、その発生総額の把握が困難である場合には、期中の平均残高が総資産の1%を超える取引を開示することもできる)

  3. 事業の譲受または譲渡の場合には、譲受または譲渡の対象となる資産や負債が個々に取引されるのではなく、一体として取引されると考えられることから、対象となる資産または負債の総額のいずれか大きい額が、総資産の1%を超える取引

関連当事者が個人の場合

関連当事者が個人グループである場合、関連当事者との取引が、連 結損益計算書項目(個別財務諸表は損益計算書項目)および連結貸借対照表項目(個別財務諸表は貸借対照表項目)等のいずれに係る取引についても、1,000万円を超える取引については、すべて開示対象となります(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針第16項)。

ただし、会社の役員(親会社および重要な子会社の役員を含む。)もしくはその近親者が、他の法人の代表者を兼務しており(当該役員等が当該法人または当該法人の親会社の議決権の過半数を自己の計算において所有している場合を除く。)、当該役員等がその法人の代表者として会社と取引を行うような場合には、法人間における商取引に該当すると考えられるため、関連当事者が個人グループの場合の取引としては扱わず、法人グループの場合の取引に属するものとして扱います(同適用指針第16項ただし書き)。

資金貸借取引、債務保証等および担保提供または受入れ

資金貸借取引、債務保証等および担保提供または受入れに関する重要性の判断については、以下のように行います(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針第17項)。


  1. 資金貸借取引
    資金貸借取引の期末残高に重要性が乏しい場合であっても、その取引に係る利息に関して、営業外収益また営業外費用の合計額の10%を超えるか(同適用指針第15項(1)②)の重要性の判断を行うとともに、その取引の発生総額に関しても総資産の1%を超えるか(同適用指針第15項(2)②)の重要性の判断を行います。

  2. 債務保証等
    債務保証等の重要性の判断は、期末における保証債務等(被保証債務等)の金額で行います。

  3. 担保提供または受入れ
    担保資産の重要性の判断は、期末における対応する債務の残高をもって行います。

外注先等への有償支給取引の取扱い

外注先等への有償支給取引については、所定の加工後、支給品のすべてまたは一部が買戻しされる場合等、種々の取引形態が考えられます。

関連当事者との取引の開示のための重要性の判断は、当該有償支給取引に係る一連の取引が連結財務諸表上相殺消去されている場合には、消去された後のそれぞれの取引金額について行います(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針第18項)。

重要な関連会社

関連会社は、以下のいずれかに該当した場合に、要約財務情報の開示を必要とする重要な関連会社となります。なお、個別財務諸表において開示を行う場合、税金等調整前当期純損益は、税引前当期純損益と読み替えます(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針第19項)。


  1. 各関連会社の総資産(持分相当額)が、総資産の10%を超える場合
  2. 各関連会社の税引前当期純損益(持分相当額)が、税金等調整前当期純損益の10%を超える場合

ただし、「2」については上記の基準を満たす場合であっても、会社の最近5年間の平均の税金等調整前当期純損益の10%を超えない場合には、開示を必要としません(同適用指針第19項ただし書き)。なお、当該期間中に税金等調整前当期純利益と税金等調整前当期純損失がある場合には、原則として税金等調整前当期純利益が発生した年度の平均とします。

開示の継続性

関連当事者の開示における重要性の判断基準の適用にあたり、これまで開示対象となっていた取引等について、ある連結会計年度または事業年度に数値基準を下回っても、それが一時的であると判断されるような場合には、ただちに開示対象から除外するなどの画一的な取扱いをせず、開示の継続性が保たれるよう留意する必要があります(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針第20項)。