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開示対象となる関連当事者との取引の範囲

財務諸表、または連結財務諸表の注記事項として開示対象となる会社関連当事者との取引は、それらのうち重要な取引に該当するものです(関連当事者の開示に関する会計基準第6項)。

連結子会社と関連当事者との取引

連結財務諸表上、連結子会社と関連当事者との間に取引がある場合には、当該取引は開示対象となります(関連当事者の開示に関する会計基準第26項)。

連結財務諸表の作成にあたり相殺消去した取引

連結財務諸表においては、連結会社と関連当事者との取引を開示対象とし、連結財務諸表を作成するにあたって相殺消去した取引は開示対象外となります(関連当事者の開示に関する会計基準第6項)。

連結財務諸表の作成にあたり相殺消去した取引についても、企業集団内の資金の流れをはじめ、各種取引の流れの全体像を把握できること、経営者と同じ視点で当該企業集団の状況を把握することが可能になること、我が国では、子会社の債務を親会社が連帯して責任を負わないなど親子一体の法制になっていないことから、開示対象とすべきとする考え方があります(同会計基準第27項)。

しかし、連結財務諸表上の関連当事者との取引の開示は、連結財務諸表にどの程度の影響を与えているかについての情報を財務諸表利用者に提供するものであることから、連結財務諸表の作成にあたり相殺消去した取引については、開示対象外としています。

資本取引

資本取引については、会社と関連当事者との間での増資の引受けや自己株式の取得などは、開示対象の取引に該当します。ただし、公募増資は、取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引に該当するため、開示対象外の取引となります(関連当事者の開示に関する会計基準第28項)。

なお、資本取引の場合、債権債務関係とは異なるため、期末残高の開示は必要ありません(同会計基準第28項なお書き)。

無償取引および低廉な価格での取引

無償取引や低廉な価格での取引については、独立第三者間取引であったと仮定した場合の金額を見積った上で、重要性の判断を行い、開示対象とするかどうかを決定します(関連当事者の開示に関する会計基準第7項)。

形式的・名目的には第三者との取引である取引

形式的・名目的に第三者を経由した取引で、実質上の相手先が関連当事者であることが明確な場合には、開示対象に含まれます(関連当事者の開示に関する会計基準第8項)。

取引条件が一般取引と同様であることが明白な取引

一般競争入札による取引ならびに預金利息および配当の受取りその他取引の性質からみて取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引については、開示対象外です(関連当事者の開示に関する会計基準第9項(1))。

これは、取引の相手先が金融機関や政府関係機関などであることを理由に開示対象外と決定するのではなく、取引の内容に焦点を当てて、開示対象外の取引とするかどうかを定めたものです。

したがって、関連当事者の定義に該当する金融機関からの多額の借入は、企業経営に重要な影響をおよぼす可能性のある資金貸借取引として開示対象となり得ます。また、政府関係機関や公共事業体などとの取引についても、補助金や利子補給などに関する重要な取引は開示対象となり得ます(同会計基準第31項)。

なお、取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引を除き、第三者との取引と同等な条件(一般的な取引条件)であっても開示は省略できません。これは、一般的な取引条件に該当するかどうかの判断が難しい場合もあり、恣意的な判断が介入する余地があると考えられるからです(同会計基準第32項)。

役員報酬

役員に対する報酬、賞与および退職慰労金の支払いは、開示対象外です(関連当事者の開示に関する会計基準第9項(2))。

役員報酬を開示対象外とするのは、現行の「企業内容等の開示に関する内閣府令」で、非財務情報であるコーポレート・ガバナンスに関する情報の中で役員報酬の内容の開示を規定していること、米国では役員報酬を非財務情報として開示を求めていることが理由です(同会計基準第33項)。

連結会社が直接関わらない関連当事者同士の取引

連結会社が直接関わらない関連当事者同士の取引については、正確か つ網羅的な情報の入手が困難であることや、連結財務諸表に与える影響が軽微な場合が多いと考えられることなどから、開示対象外です。

関連当事者との取引の開示対象期間

連結会計年度または事業年度の途中において関連当事者に該当することとなった場合、または関連当事者に該当しなくなった場合には、関連当事者であった期間中の取引が開示対象となります。期末に子会社を取得(みなし取得を含む。)し、貸借対照表のみ連結している場合で、取得前の期間において関連当事者に該当する場合には、当該会社との取引は連結財務諸表上相殺消去されていないため、関連当事者との取引の開示対象となります(関連当事者の取引に関する会計基準の適用指針第6項)。