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賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準

企業が保有する不動産は、通常、貸借対照表固定資産に区分されます。

固定資産は、長期に渡って事業の用に供するために保有する資産であり、一般に原価評価されます。ここで、原価評価とは、取得原価から減価償却累計額等を控除した金額のことです。

企業が保有する不動産は、必ずしも事業の用に供することを目的として取得したとは限りません。例えば、単に賃貸収益を得ることを目的として保有する場合、時価の値上げを期待し売買益を得ることを目的として保有する場合もあります。

このような目的で保有する不動産についても、原価評価で良いのか、時価評価すべきではないかとする意見がありますが、賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準第15項では、「活発な取引が行われるよう整備された購買市場と売却市場とが区別されていない場合には、時価によって直ちに売買・換金を行うことには制約があるため、当該不動産を時価評価し、その差額を損益とすることは適当ではない」とし、賃貸等不動産に分類される不動産についても、原価評価することとしています。

しかしながら、同会計基準第18項では、一定の不動産については、事実上、事業投資と考えられるものでも、その時価を開示することが投資情報として一定の意義があり、さらに国際財務報告基準(IFRS)が原価評価の場合に時価を注記することとしていることとのコンバージェンスを図る観点から、賃貸等不動産に該当する場合には、時価の注記を行うことを要求しています。

賃貸等不動産とは

「賃貸等不動産」とは、棚卸資産に分類されている不動産以外のものであって、賃貸収益またはキャピタル・ゲインの獲得を目的として保有されている不動産(ファイナンス・リース取引の貸手における不動産を除く。)をいいます。したがって、物品の製造や販売、サービスの提供、経営管理に使用されている場合は賃貸等不動産には含まれません(賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準第4項(2))。

なお、以下の目的で保有し棚卸資産に分類している不動産は、棚卸資産の評価に関する会計基準が適用されるので、時価等の開示対象から除かれます(賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準第19項)。


  1. 通常の販売目的で保有する棚卸資産に含まれる販売用不動産や開発事業等支出金
  2. 第三者のために建設中または開発中の請負工事等に基づく未成工事支出金
  3. トレーディング目的で保有する棚卸資産

物品の製造や販売、サービスの提供、経営管理に使用されている不動産の取扱い

物品の製造や販売、サービスの提供、経営管理に使用されている不動産は、時価等の開示対象とはされません。

なぜなら、それらの不動産は、市場平均を超える成果を生み出すことを期待して使用されており、企業にとっての価値は、通常、市場の平均的な期待で決まる時価ではないと考えられるからです(賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準第20項)。

時価とは

「時価」とは、公正な評価額をいいます。通常、時価は観察可能な市場価格に基づく価額をいい、市場価格が観察できない場合には合理的に算定された価額をいいます(賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準第4項(1))。