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従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引

会社が取締役や従業員等に報酬として自社株式を取得する権利を付与することがあります。この報酬は、ストック・オプションと呼ばれ、従業員等が自社株式を取得する権利は新株予約権といいます。

近年、権利確定条件が付された新株予約権を従業員等に付与する場合に当該新株予約権の付与に伴い当該従業員等が一定の額の金銭を企業に払い込む取引(権利確定条件付き有償新株予約券)が行われることがあります。

従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約券を付与する取引については、ストック・オプション等に関する会計基準の公表時に想定されていませんでしたが、以下の理由から、同会計基準の枠組みで対応することが適切と結論付けられました(従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い第14項)。


  1. ストック・オプション等に関する会計基準は自社株式オプションを従業員等に付与する取引等を整理した基準であり、従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引が有する、引受先が従業員等に限定されるという特徴や権利確定条件が付されているという特徴は、同会計基準が想定している取引と類似している。

  2. 従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引は、ストック・オプション等に関する会計基準第2項(4)に定める報酬としての性格を有していると整理し得る。

目的と範囲

従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱いは、権利確定条件付き有償新株予約権について必要と考えられる会計処理および開示を明らかにすることを目的としています(同取扱い第1項)。

同取扱いの対象となる権利確定条件付き有償新株予約権は、概ね次の内容で発行されるものです(同取扱い第2項)。


  1. 企業は、従業員等を引受先として、新株予約権の募集事項(募集新株予約権の内容(行使価格、権利確定条件等を含む。)および数、払込金額、割当日、払込期日等)を決議する。当該新株予約権は、市場価格がないものを対象とする。

  2. 募集新株予約権には、権利確定条件として、勤務条件および業績条件が付されているか、または勤務条件は付されていないが業績条件は付されている。

  3. 募集新株予約権を引き受ける従業員等は、申込期日までに申し込む。

  4. 企業は、申込者から募集新株予約権を割り当てる者およびその数を決定する。割当てを受けた従業員等は、割当日に募集新株予約権の新株予約権者となる。

  5. 新株予約権者となった従業員等は、払込期日までに一定の額の金銭を企業に払い込む。

  6. 新株予約権に付されている権利確定条件が満たされた場合、当該新株予約権は行使可能となり、当該権利確定条件が満たされなかった場合、当該新株予約権は失効する。

  7. 新株予約権者となった従業員等は、権利行使期間において権利が確定した新株予約権を行使する場合、行使価格に基づく額を企業に払い込む。

  8. 企業は、新株予約権が行使された場合、当該新株予約権を行使した従業員等に対して新株を発行するか、または自己株式を処分する。

  9. 新株予約権が行使されずに権利行使期間が満了した場合、当該新株予約権は失効する。

用語の定義

従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱いに、ストック・オプション等会計基準第2項に定義されている用語が使われている場合、当該用語の定義に従います(同取扱い第3項)。