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従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引の会計処理および開示

従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱いが対象とする権利確定条件付き有償新株予約権を付与する場合、当該権利確定条件付き有償新株予約権は、ストック・オプション等に関する会計基準第2項(2)に定めるストック・オプションに該当するものとします(同取扱い第4項)。

ただし、権利確定条件付き有償新株予約権が従業員等から受けた労働や業務執行等のサービスの対価として用いられていないことを立証できる場合には、ストック・オプション等に関する会計基準第2項(2)に定めるストック・オプションに該当せず、「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理」にしたがいます(同取扱い第4項ただし書き)。

ストック・オプションに該当する権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引の会計処理は、権利確定日以前と権利確定日後に大きく分けることができます。

権利確定日以前の会計処理

権利確定条件付き有償新株予約権の付与に伴う従業員等からの払込金額を、純資産の部に新株予約権として計上します(従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い第5項(1))。

また、権利確定条件付き有償新株予約権の付与に伴い企業が従業員等から取得するサービスは、その取得に応じて費用として計上し、対応する金額を、当該権利確定条件付き有償新株予約権の権利の行使または失効が確定するまでの間、純資産の部に新株予約権として計上します(同取扱い第5項(2)およびストック・オプション等に関する会計基準第4項)。

各会計期間における費用計上額

各会計期間における費用計上額として、権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から払込金額を差し引いた金額のうち、対象勤務期間を基礎とする方法その他の合理的な方法に基づき当期に発生したと認められる額を算定します。当該権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額は、公正な評価単価に権利確定条件付き有償新株予約権数を乗じて算定します(従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い第5項(3))。

公正な評価単価の算定

権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価単価は、以下のように算定します(従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い第5項(4))。


  1. 公正な評価単価は付与日において算定し、ストック・オプション等に関する会計基準第10項(1)に定める付与日における公正な評価単価を上回る場合の条件変更を除き見直さない(ストック・オプション等に関する会計基準第6項(1))。

  2. 権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価単価における算定技法については、株式オプションの合理的な価額の見積りに広く受け入れられている算定技法を利用する。算定技法の利用にあたっては、付与する権利確定条件付き有償新株予約権の特性や条件等を適切に反映するよう必要に応じて調整を加える。なお、失効の見込みについては権利確定条件付き有償新株予約権数に反映させるため、公正な評価単価の算定上は考慮しない(ストック・オプション等に関する会計基準第6項(2))

上記「2」の株式オプションの合理的な価額の見積りに広く受け入れられている算定技法については、ストック・オプションの公正な評価単価の算定技法が満たすべき要件を参考にしてください。

権利確定条件付き有償新株予約権数の算定および見直し

権利確定条件付き有償新株予約権数の算定およびその見直しによる会計処理は、次のとおり行います(従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い第5項(5))。


  1. 権利確定条件付き有償新株予約権数は、付与日において、付与された権利確定条件付き有償新株予約権数(付与数」)から、権利不確定による失効の見積数を控除して算定する(ストック・オプション会計基準第7項(1))。

  2. 付与日から権利確定日の直前までの間に、権利不確定による失効の見積数に重要な変動が生じた場合(ストック・オプション数を変動させる条件変更を除く。)、これに伴い権利確定条件付き有償新株予約権数を見直す。権利確定条件付き有償新株予約権数を見直す場合、見直し後の権利確定条件付き有償新株予約権数に基づく権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から払込金額を差し引いた金額のうち合理的な方法に基づき見直しを行った期までに発生したと認められる額と、これまでに費用計上した額(当該見直しの直前の権利確定条件付き有償新株予約権数に基づく権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から払込金額を差し引いた金額のうち合理的な方法に基づき計上した額)との差額を、見直しを行った期の損益として計上する。

  3. 権利確定日には、権利確定条件付き有償新株予約権数を権利の確定した権利確定条件付き有償新株予約権数に修正する。
    権利確定条件付き有償新株予約権数を修正する場合、修正後の権利確定条件付き有償新株予約権数に基づく権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から払込金額を差し引いた金額と、これまでに費用計上した額(当該修正の直前の権利確定条件付き有償新株予約権数に基づく権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から払込金額を差し引いた金額のうち合理的な方法に基づき計上した額)との差額を、権利確定日の属する期の損益として計上する。

権利不確定による失効

新株予約権として計上した払込資本は、権利不確定による失効に対応する部分を利益として計上します(従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い第5項(6))。

権利確定日後の会計処理

従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引について、権利確定日後の会計処理は次のように行います(従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い第6項)。


  1. 権利確定条件付き有償新株予約権が権利行使され、これに対して新株を発行した場合、新株予約権として計上した額のうち、当該権利行使に対応する部分を払込資本に振り替える(ストック・オプション等に関する会計基準第8項)。

  2. 権利不行使による失効が生じた場合、新株予約権として計上した額のうち、当該失効に対応する部分を利益として計上する。この会計処理は、当該失効が確定した期に行う(同会計基準第9項)。

権利確定日の判定

権利確定条件付き有償新株予約権の権利確定日は、次のように判定します(従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い第7項)。


  1. 勤務条件および業績条件が付されている場合、これらの条件のうちいずれかを満たすことにより権利が確定するときは、当該いずれかの条件を満たした日を権利確定日とする(ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」第19項(1))。

  2. 勤務条件および業績条件が付されている場合、これらの条件のすべてを満たすことにより権利が確定するときは、これらのすべての条件を満たした日を権利確定日とする(同適用指針第19項(2))。

  3. 勤務条件は付されていないが業績条件は付されている場合、業績の達成または達成しないことが確定する日を権利確定日とする。

その他の会計処理

従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱いに定めのないその他の会計処理については、ストック・オプション等に関する会計基準およびストック・オプション等に関する会計基準の適用指針の定めに従います(同取扱い8項)。

開示

従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する注記は、ストック・オプション等に関する会計基準第16項およびストック・オプション等に関する会計基準の適用指針第24項から第 35項に従って行います(従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い第9項)。