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ストック・オプションに係る条件変更の会計処理

ストック・オプションを付与した後、条件変更が行われることがあります。

条件変更には様々な態様がありますが、その典型例は、ストック・オプションの付与後に株価の著しい下落が生じ、権利行使される可能性が減少することにより、当初期待していたインセンティブ効果が大幅に失われたため、これを回復する目的で行使価格を引き下げる場合です(ストック・オプション等に関する会計基準第54項)。

以下のような条件変更が行われた場合、それぞれの条件変更に合わせて会計処理を行う必要があります。


  1. ストック・オプションの公正な評価単価を変動させる条件変更
  2. ストック・オプション数を変動させる条件変更
  3. 費用の合理的な計上期間を変動させる条件変更

公正な評価単価を変動させる条件変更

ストック・オプションにつき、行使価格を変更する等の条件変更により、公正な評価単価を変動させた場合には、条件変更日(条件変更が行われた日のうち、特に条件変更以後をいう。)におけるストック・オプションの公正な評価単価が、付与日における公正な評価単価を上回る場合と付与日における公正な評価単価以下となる場合にわけて会計処理します(ストック・オプション等に関する会計基準第10項)。

付与日における公正な評価単価を上回る場合

各会計期間における費用計上額の定め(ストック・オプション等に関する会計基準第5項)に基づき、条件変更前から行われてきた付与日におけるストック・オプションの公正な評価単価に基づく公正な評価額による費用計上を継続して行います(同会計基準第10項(1))。

さらに条件変更日におけるストック・オプションの公正な評価単価が付与日における公正な評価単価を上回る部分に見合うストック・オプションの公正な評価額の増加額についても、以後、第5項の定めに基づき、追加的に費用計上を行います。



付与日における公正な評価単価を下回る場合

条件変更日以後においても、各会計期間における費用計上額の定め(ストック・オプション等に関する会計基準第5項)に基づき条件変更前から行われてきたストック・オプションの付与日における公正な評価単価に基づく公正な評価額による費用計上を継続します(同会計基準第10項(2))。

なお、新たな条件のストック・オプションの付与と引換えに、当初付与したストック・オプションを取り消す場合には、実質的に当初付与したストック・オプションの条件変更と同じ経済実態を有すると考えられる限り、ストック・オプションの条件変更とみなして会計処理を行います(同会計基準第10項(2)なお書き)。



ストック・オプション数を変動させる条件変更

ストック・オプションにつき、権利確定条件を変更する等の条件変更により、ストック・オプション数を変動させた場合には、条件変更前から行われてきた各会計期間における費用計上額の定め(ストック・オプション等に関する会計基準第5項)に基づく費用計上を継続して行います(同会計基準第11項)。

また、条件変更によるストック・オプション数の変動に見合うストック・オプションの公正な評価額の変動額は、以後、合理的な方法に基づき、残存期間にわたって計上します。

なお、ストック・オプション数を変動させる条件変更が行われた場合、ストック・オプション数の算定および見直しの定め(同会計基準第7項(2))は適用されません(同会計基準第57項)。



費用の合理的な計上期間を変動させる条件変更

ストック・オプションにつき、対象勤務期間の延長または短縮に結びつく勤務条件の変更等により、費用の合理的な計上期間を変動させた場合には、当該条件変更前の残存期間に計上すると見込んでいた金額を、以後、合理的な方法に基づき、新たな残存期間にわたって費用計上します(ストック・オプション等に関する会計基準第12項)。



複合的な条件変更

上記3つの累計の条件変更は、同時に行われることがあります。

複合的な条件変更の場合には、それぞれの要素に分解し、会計処理を行います(ストック・オプション等に関する会計基準第59項)。