親会社が自社株式オプションを子会社の従業員等に付与する場合の取扱い
親会社が、自社株式オプションを子会社の従業員等に付与した場合には、以下の会計処理を行います(ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針第22項)。
- 親会社が自社株式オプションを付与した結果、これに対応して、親会社が子会社において享受したサービスの消費を、親会社の個別財務諸表において費用として計上。当該費用については、「株式報酬費用」等の科目名称を用います。
- 子会社の従業員等に対する当該親会社株式オプションの付与が子会社の報酬体系に組み入れられている等、子会社においても自社の従業員等に対する報酬として位置付けられている場合には、その付与と引換えに従業員等から提供された上記サービスの消費を、子会社の個別財務諸表においても費用として計上。当該費用については、「給料手当」等の科目名称を用います。
この場合、子会社の個別財務諸表においては、同時に、報酬の負担を免れたことによる利益を特別利益として計上します。当該特別利益については、「株式報酬受入益」等の科目名称を用います。 - 子会社の従業員等に対する当該親会社株式オプションの付与が子会社の報酬としては位置付けられていない場合には、子会社の個別財務諸表において会計処理は必要ありません。
- 子会社の従業員等に対する親会社株式オプションの付与が、子会社の報酬としては位置づけられていない場合の会計処理
- 子会社の従業員等に対する親会社株式オプションの付与が、子会社の報酬として位置づけられている場合の会計処理
親会社株式オプションの態様
子会社の従業員等に親会社株式を原資産とする株式オプションを付与する取引には、以下のような態様が考えられます(ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針第62項)。
- 親会社が自社株式オプションを、直接子会社の従業員等に付与する場合
- 親会社が自社株式オプションを、子会社経由でその従業員等に付与する場合
- 子会社が自社の従業員等に、報酬として親会社株式オプションを付与する場合
- 上記「1」から「3」の各場合において、子会社の従業員等に代えて、子会社の従業員等以外の者に自社株式オプションを付与する場合
親会社が自社株式オプションを、直接子会社の従業員等に付与する場合
親会社の会計処理
親会社が自社株式オプションを、直接子会社の従業員等に付与する場合には、親会社がこれをサービスの対価として付与するものと考えられ(ストック・オプション等に関する会計基準第24項)、親会社の 個別財務諸表においては、この自社株式オプション付与に対応して、親会社が子会社において享受したサービスの消費を費用として計上することになると考えられます(ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針第63項)。
この場合、親会社では、株式報酬費用が認識されます。
子会社の会計処理
子会社従業員等に対する親会社株式オプションの付与が、同時に子会社においてその報酬体系に組み入れられている等、子会社においても、自社の従業員等に対する報酬として位置付けられている場合には、その報酬と引換えに子会社が受領したサービスの消費を子会社の個別財務諸表において、費用(給料手当)として計上することになると考えられます。
この場合、子会社は、自らその報酬を負担しているわけではないため、子会社の財務諸表において、報酬の負担を免れたことによる利益(株式報酬受入益)を同時に計上する必要があります(ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針第63項)。
一方、子会社従業員等に対する親会社株式オプションの付与が、子会社においては、報酬と位置付けられていない場合には、これと引換えに子会社が従業員等からサービスを受領したという関係にはないため、たとえ子会社がそのサービスを消費したとしても、子会社の財務諸表上、費用として計上することにはならず、何らの会計処理も要しないものと考えられます(同適用指針第22項(3)および第63項)
親会社が自社株式オプションを、子会社経由でその従業員等に付与する場合
子会社がその従業員等に親会社株式オプションを付与する場合であっても、実質的に、親会社が自社株式オプションを、子会社経由でその従業員等に付与している場合には、通常、子会社は親会社からその株式オプションを無償で取得することになると考えられ、単に付与の経路が異なるだけで、親会社がサービスの対価として自社株式オプションを付与したものと考えられます(ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針第64項)。
親会社の会計処理
親会社の 個別財務諸表においては、自社株式オプション付与に対応して、親会社が子会社において享受したサービスの消費を費用(株式報酬費用)として計上することになると考えられます。
子会社の会計処理
子会社が受領したサービスの消費を子会社の個別財務諸表において、費用(給料手当)として計上するとともに報酬の負担を免れたことによる利益(株式報酬受入益)を同時に計上する必要があります。
子会社従業員等に対する親会社株式オプションの付与が、子会社においては、報酬と位置付けられていない場合には、何らの会計処理も要しないものと考えられます。
子会社が自社の従業員等に、報酬として親会社株式オプションを付与する場合
子会社がその従業員等に、親会社株式オプションを付与する場合であ っても、子会社自身の報酬として付与されている場合があります。
親会社の会計処理
子会社が従業員等に付与する親会社株式オプションは、親会社が消費するサービスの対価ではないため、親会社の個別財務諸表において、子会社従業員等のサービス提供に関する費用を計上する必要はありません(ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針第65項)。
子会社の会計処理
子会社がその会社財産たる親会社株式オプションで報酬を支払ったものと理解でき、子会社の個別財務諸表において費用を計上(給料手当)する必要があります(ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針第65項)。
子会社の従業員等以外の者に自社株式オプションを付与する場合
付与の相手が、持分法適用会社の従業員等である場合であっても、それぞれの個別財務諸表における会計処理は、基本的に親会社が自社株式オプションを、直接子会社の従業員等に付与する場合、親会社が自社株式オプションを、子会社経由でその従業員等に付与する場合、子会社が自社の従業員等に、報酬として親会社株式オプションを付与する場合の会計処理と同じになると考えられます(ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針第66項)。