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財貨またはサービスの取得の対価として自社株式オプションを付与する取引の会計処理

財貨またはサービスの取得の対価として自社株式オプションを用いる取引は、取引の相手方のいかんを問わず、また、取引の結果、取得することとなる財貨またはサービスの内容のいかんを問わず、ストック・オプションの会計処理と整合的な会計処理を適用することが適当 と考えられます(ストック・オプション等に関する会計基準第64項)。

そのため、原則として、一般的に取引の対価として自社株式オプションを用いる取引には、ストック・オプションに関する会計処理と整合的な会計処理を行うことになります。ただし、この場合には、以下の点に留意しなければなりません(同会計基準第14項)。


  1. 取得した財貨またはサービスが、他の会計基準に基づき資産とされる場合には、当該他の会計基準に基づき会計処理を行う。
  2. 取得した財貨またはサービスの取得価額は、対価として用いられた自社株式オプションの公正な評価額もしくは取得した財貨またはサービスの公正な評価額のうち、いずれかより高い信頼性をもって測定可能な評価額で算定する。
  3. 自社株式オプションの付与日における公正な評価単価の算定につき、市場価格が観察できる場合には、当該市場価格による。

自社の株式を交付する取引

財貨またはサービスの取得の対価として、自社株式オプションを付与する取引と同様、対価として自社の株式を交付する取引であっても、対価性が認められる限り、取得した財貨またはサービスを財務諸表上認識する必要があると考えられます(ストック・オプション等に関する会計基準第65項)。

企業が財貨またはサービスの取得の対価として、自社の株式を用いる取引については、次のように会計処理を行います(同会計基準第15項)。


  1. 取得した財貨またはサービスを資産または費用として計上し、対応額を払込資本として計上する。
  2. 取得した財貨またはサービスの取得価額は、対価として用いられた自社の株式の契約日における公正な評価額もしくは取得した財貨またはサービスの公正な評価額のうち、いずれかより高い信頼性をもって測定可能な評価額で算定する。

いずれかより高い信頼性をもって測定可能な評価額

取得した財貨またはサービスの取得価額は、対価として用いられた自社株式オプションまたは自社の株式の公正な評価額もしくは取得した財貨またはサービスの公正な評価額のうち、いずれかより高い信頼性をもって測定可能な評価額により算定しなければなりません。

その際、いずれの側の評価額で算定するかの判断は次のように行います(ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針第23項)。


  1. 公開企業において、財貨またはサービスの取得の対価として自社の株式を用いる取引に関しては、通常、自社の株式の市場価格による信頼性のある測定が可能であり、これに基づいて算定する。

  2. 公開企業において、財貨またはサービスの取得の対価として自社株式オプションを対価として用いる取引に関しては、通常、自社の株式の市場価格を基礎として、自社株式オプションの公正な評価額を信頼性をもって測定することが可能であり、自社株式オプションの公正な評価額に基づいて算定を行う。ただし、特に取得する財貨等が市場価格とより直接的に結びついているような場合には、財貨等の市場価格で測定することで、より信頼性の高い測定が可能となる場合があり得る。

  3. 未公開企業において、財貨またはサービスの取得の対価として自社株式オプションを用いた場合、これと対価関係にある財貨またはサービスの市場価格を参照できる場合には、その市場価格で算定を行う。財貨またはサービスの市場価格を直接参照できない場合にも、その市場価格を合理的に見積ることにより、自社株式オプションより信頼性の高い測定が可能となる場合が多く、そのような場合には、その合理的に見積られた市場価格で算定を行う。

  4. 未公開企業において、財貨またはサービスの取得の対価として自社の株式を用いた場合であって、第三者割当増資や株式の売買がなされており、これらの情報をもとに、一定程度の信頼性をもって自社の株式の公正な評価額を見積ることができる場合には、これに基づいて算定する。

ストック・オプションの場合、従業員等から量または質の面で、追加的に提供されるサービスの価値を信頼性をもって測定することが困難なことから、一律にストック・オプションの公正な評価額で算定することとされています(ストック・オプション等に関する会計基準第5項)。

一方、ストック・オプション以外の場合、対価として用いられた自社株式オプションや自社の株式の公正な評価額だけでなく、これによって取得した財貨またはサービスの公正な評価額も用いることができます。そこで、いずれの測定値の信頼性が高いかの判定は、具体的な取引の諸要因を考慮して総合的に判定することになると考えられます(ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針第67項)。