自己株式とは
自己株式は、会社が自ら発行済株式を取得し、消却せずに保有しているものをいいます。自己株式は、法令で定める一定の要件を満たしている場合に取得が可能となります。
自己株式の会計的性格
会計学上、自己株式は、株主資本の減少とする考え方と資産とする考え方があります。
株主資本の減少とする考え方
株式を発行すると株主資本が増加するのであるから、反対に自己株式を取得した時には、いまだ減資や株式消却が行われていなくても、実質的には資本の減少と同じと考えることができます。
そのため、取得した自己株式は、株主資本の控除項目として会計処理するのが妥当といえます。
資産とする考え方
自己株式といえども、通常の株式と同様に換金価値があるので、資産として扱うのが妥当と考えられます。また、減資は、法令で定める所定の手続きを経なければ行えないので、単に自己株式を取得しただけでは株主資本が減少したということはできません。
そのため、取得した自己株式は、貸借対照表の資産の部に計上することになります。
自己株式処分差額
自己株式を売却などによって処分した場合、自己株式の取得原価と処分価額の差額は自己株式処分差額となります。処分価額が取得原価を上回る場合には自己株式処分差益、下回る場合には自己株式処分差損が生じます。
自己株式処分差額については、自己株式を株主資本の減少と考えるか、資産と考えるかによって会計処理が異なります。
株主資本の減少と考える場合
自己株式の取得を株主資本の減少と考える場合、自己株式処分差益は、資本剰余金に加算されます。自己株式の処分は、新株発行と同様の経済的実態を有しているので、株主との間の取引、つまり資本取引とみることができます。そうすると、自己株式処分差益は払込資本と同様の経済的実態を有しているといえるので、資本剰余金として会計処理するのが適切と考えられます。
また、自己株式処分差損については、払込資本の払戻しと同様の性格を有していることから、資本剰余金から減額するのが適切といえます。ただし、自己株式処分差損を吸収できるだけの資本剰余金がない場合には、利益剰余金から減額することになります。
資産とする考え方
自己株式を資産と考える場合、自己株式処分差額は、当期の損益として会計処理されます。すわなち、自己株式処分差益は営業外収益、自己株式処分差損は営業外費用に計上されます。