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各年度末の未償却残高が翌期以降の見込販売収益を上回る場合の市場販売目的のソフトウェアの償却費の計算

ここでは、各年度末の未償却残高が翌期以降の見込販売収益を上回る場合の市場販売目的のソフトウェアの償却費の計算について具体例を用いて解説します。

前提条件


  1. 甲社(3月決算会社)は、x1年4月1日にソフトウェア制作費150,000千円を無形固定資産に計上しました。

  2. ソフトウェアの見込有効期間は3年です。

  3. 各年度の見込販売数量は以下の通りです。
    x2年3月期=1,800個
    x3年3月期=2,200個
    x4年3月期=1,000個
    総見込販売数量=5,000個

  4. 各年度の見込販売収益は以下の通りです。
    x2年3月期=144,000千円
    x3年3月期=132,000千円
    x4年3月期=24,000千円
    総見込販売収益=300,000千円

  5. ソフトウェアは見込販売数量に基づいて償却します。

  6. 販売開始時における見込み通りに各年度の販売収益が計上されたものとします。また、ソフトウェアの見込有効期間にも変更がなかったものとします。

見込販売数量に基づく償却費の計算

見込販売数量に基づく場合の償却費の計算を以下に示します。

x2年3月期

見込販売数量に基づく償却額

3年間の総見込販売数量が5,000個で、x2年3月期の販売数量が1,800個だったので、以下の計算より、ソフトウェア制作費150,000千円のうち54,000千円が、見込販売数量に基づく償却額になります。


  • x2年3月期の見込販売数量に基づく償却額
    =ソフトウェア制作費の未償却残高×x2年3月期の販売数量/3年間の総見込販売数量
    =150,000千円×1,800個/5,000個
    =54,000千円

残存有効期間に基づく償却額

毎期の償却額は、残存有効期間に基づく均等配分額を下回ってはなりません(研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針Ⅰ 18.ただし書き)。

そのため、残存有効期間に基づく償却額と見込販売数量に基づく償却額を比較し、多い方をx2年3月期の償却額とします。


  • x2年3月期の残存有効期間に基づく償却額
    =ソフトウェア制作費の未償却残高/残存有効期間
    =150,000千円/3年
    =50,000千円

x2年3月期の償却費

見込販売数量に基づく償却額54,000千円と残存有効期間に基づく償却額50,000千円を比較すると、見込販売数量に基づく償却額54,000千円の方が大きいので、x2年3月期の償却費は54,000千円になります。

x3年3月期

総見込販売数量

残り2年間の総見込販売数量は、以下の計算より3,200個です。


  • 2年間の総見込販売数量
    =2,200個+1,000個
    =3,200個

ソフトウェアの未償却残高

x2年3月期に54,000千円の償却費を計上したので、未償却残高は、以下の計算より96,000千円です。


  • ソフトウェアの未償却残高
    =取得原価-前年度までの償却費の合計額
    =150,000千円-54,000千円
    =96,000千円

見込販売数量に基づく償却額

残り2年間の総見込販売数量が3,200個で、x3年3月期の販売数量が2,200個だったので、以下の計算より、ソフトウェア制作費の未償却残高96,000千円のうち66,000千円が、見込販売数量に基づく償却額になります。


  • x3年3月期の見込販売数量に基づく償却額
    =ソフトウェア制作費の未償却残高×x3年3月期の販売数量/2年間の総見込販売数量
    =96,000千円×2,200個/3,200個
    =66,000千円

残存有効期間に基づく償却額

残存有効期間に基づく償却額は、以下の計算より48,000千円です。


  • x3年3月期の残存有効期間に基づく償却額
    =ソフトウェア制作費の未償却残高/残存有効期間
    =96,000千円/2年
    =48,000千円

x3年3月期の償却費

見込販売数量に基づく償却額66,000千円と残存有効期間に基づく償却額48,000千円を比較すると、見込販売数量に基づく償却額66,000千円の方が大きいので、x3年3月期の償却費は66,000千円になります。

見込販売収益を超過する未償却残高の費用処理

x2年3月期に54,000千円、x3年3月期に66,000千円の償却費を計上したので、未償却残高は、以下の計算より30,000千円です。


  • ソフトウェアの未償却残高
    =取得原価-前年度までの償却費の合計額
    =150,000千円-(54,000千円+66,000千円)
    =30,000千円

x3年3月末のソフトウェアの未償却残高30,000千円は、x4年3月期の見込販売収益24,000千円を上回っています。

未償却残高が翌期以降の見込販売収益の額を上回る場合には、当該超過額を一時の費用または損失として処理しなければなりません(研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針Ⅰ 20.)。

したがって、未償却残高30,000千円のうち6,000千円を追加で費用または損失として計上し、x3年3月期末の未償却残高を24,000千円に引き下げます。


  • 追加の費用または損失の計上額
    =未償却残高-翌期以降の見込販売収益の額
    =30,000千円-24,000千円
    =6,000千円

x4年3月期

総見込販売数量

残り1年間の総見込販売数量は、1,000個です。

見込販売数量に基づく償却額

残り1年間の総見込販売数量が1,000個で、x4年3月期の販売数量が1,000個だったので、以下の計算より、見込販売数量に基づく償却額は24,000千円になります。


  • x4年3月期の見込販売数量に基づく償却額
    =ソフトウェア制作費の未償却残高×x4年3月期の販売数量/1年間の総見込販売数量
    =24,000千円×1,000個/1,000個
    =24,000千円

残存有効期間に基づく償却額

残存有効期間に基づく償却額は、以下の計算より24,000千円です。


  • x4年3月期の残存有効期間に基づく償却額
    =ソフトウェア制作費の未償却残高/残存有効期間
    =24,000千円/1年
    =24,000千円

x4年3月期の償却費

見込販売数量に基づく償却額と残存有効期間に基づく償却額はともに24,000千円で同じです。よって、x4年3月期の償却費は24,000千円になります。


以上の見込販売数量に基づく償却額の計算を表にすると以下のようになります。

見込販売数量に基づく償却費の計算