HOME > 各論 > 棚卸資産の評価に関する会計基準 >

 

通常の販売目的で保有する棚卸資産の収益性の低下に係る損益の表示と注記

通常の販売目的で保有する棚卸資産について、簿価切り下げを行った場合には、損益計算書の表示に留意しなければなりません。また、その内容を注記する必要があります。

表示

通常の販売目的で保有する棚卸資産について簿価切り下げを行った場合、損益計算書に以下のように表示します(棚卸資産の評価に関する会計基準第17項)。


  1. 収益性の低下による簿価切下額(前期に計上した簿価切下額を戻し入れる場合には、当該戻入額相殺後の額)は売上原価とする。
  2. 原材料等に係る簿価切下額のうち、例えば品質低下に起因する簿価切下額など、棚卸資産の製造に関連し不可避的に発生すると認められるときには製造原価として処理する。
  3. 収益性の低下に基づく簿価切下額が、臨時の事象に起因し、かつ、多額であるときには、特別損失に計上する。

上記の「2」の場合でも、簿価切下額に重要性が乏しい場合には、売上原価に一括計上できます(同会計基準第62項)。

また、「3」の臨時の事象には、重要な事業部門の廃止や災害損失の発生があります。なお、当該場合には、洗替え法を適用していても、当該簿価切下額の戻入れを行ってはなりません(同会計基準第17項ただし書き)。

収益性の低下に基づき帳簿価額を切り下げる場合の留意点

収益性の低下に基づき帳簿価額を切り下げる場合には、従来の強制評価減が計上される余地はないものと考えられることから、正味売却価額が帳簿価額よりも著しく下落したという理由をもって、簿価切下額を営業外費用または特別損失に計上することはできません(棚卸資産の評価に関する会計基準第64項)。

洗替え法を採用する場合の留意点

洗替え法を採用している場合、前期末に計上した簿価切下額の戻入額の損益計上区分と、当期の簿価切下額の損益計上区分とが異なる場合、前期の戻入額と販売による当期の売上総利益のマイナス(販売されていない場合には、追加の簿価切下額)が両建計上されてしまうため、両者を同じ区分に計上することが適当です(棚卸資産の評価に関する会計基準第65項)。

例えば、前期に原材料の評価損を重要性がないものとして売上原価に計上していたけども、当期は重要性があるものとして製造原価に計上していたとします。

この場合、前期の評価損の戻し入れを売上原価から減額するのではなく、当期の評価損と相殺して製造原価に計上します。

注記

通常の販売目的で保有する棚卸資産について、収益性の低下による簿価切下額(前期に計上した簿価切下額を戻し入れる場合には、当該戻入額相殺後の額)は、注記による方法または売上原価等の内訳項目として独立掲記する方法により示さなければなりません。ただし、当該金額の重要性が乏しい場合には、この限りではありません(棚卸資産の評価に関する会計基準第18項)。