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取締役の報酬等として株式を無償交付する取引

2019年12月に成立した「会社法の一部を改正する法律」により、会社法第202条の2において、金融商品取引法第2条第16項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社が、取締役等の報酬等として株式の発行等をする場合には、金銭の払込み等を要しないことが新たに定められました(取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い第1項)。

改正前は、会社法第199条第1項の募集に係る新株の発行または自己株式の処分をしようとするときは、その都度、募集株式の払込金額またはその算定方法を定めなければならなりませんでした。そのため、取締役等の報酬等として新株の発行または自己株式の処分を行う場合、金銭を取締役等の報酬等とした上で、取締役等に株式会社に対する報酬支払請求権を現物出資財産として給付させることによって株式を交付することが、実務上行われていました(同取扱い第25項)。

従来の取締役等の報酬として株式を交付する取引

しかし、このような方法は技巧的であり、かつ、このように株式を交付した場合の資本金等の取扱いが明確でないとの指摘がありました。

そこで、会社法第202条の2第1項で、上場会社が、取締役等への報酬として新株の発行または自己株式の交付を行う場合には、募集株式の払込金額またはその算定方法を定めることを要しないとされ、上記のような現物出資を擬制せずとも、取締役等の報酬等として株式の無償交付ができるようになりました。

株式の無償交付

目的と範囲

取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱いは、取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式の発行等をする場合における会計処理および開示を明らかにすることを目的とし、当該取引に適用されます(同取扱い第2項および第3項)。

用語の定義

取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い第4項では、以下の用語の定義を定めています。


  1. 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引
  2. 取締役等
  3. 報酬等
  4. 金銭の払込み等
  5. 株式の発行等
  6. 割当日
  7. 事前交付型
  8. 事後交付型
  9. 付与日
  10. 権利確定日
  11. 対象勤務期間
  12. 権利確定条件
  13. 勤務条件
  14. 業績条件
  15. 公正な評価額
  16. 没収

取締役の報酬等として株式を無償交付する取引

「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引」とは、会社法第202条の2に基づいて、取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式の発行等をする取引をいいます。

取締役等

「取締役等」とは、会社法第326条に規定される取締役および第402条に規定される執行役をいいます。

報酬等

「報酬等」とは、会社法第361条に規定される報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益をいいます。

金銭の払込み等

「金銭の払込み等」とは、会社法第199条に規定される募集株式と引換えにする金銭の払込みまたは財産の給付をいいます。

株式の発行等

「株式の発行等」とは、自社の新株の発行または自己株式の処分をいいます。

割当日

「割当日」とは、会社法第202条の2第1項第2号に基づいて定められる株式の発行等が行われる日(会社法第209条第4項)をいいます。

事前交付型

「事前交付型」とは、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引のうち、対象勤務期間の開始後速やかに、契約上の譲渡制限が付された株式の発行等が行われ、権利確定条件が達成された場合には譲渡制限が解除されるが、権利確定条件が達成されない場合には企業が無償で株式を取得する取引をいいます。

事後交付型

「事後交付型」とは、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引のうち、契約上、株式の発行等について権利確定条件が付されており、権利確定条件が達成された場合に株式の発行等が行われる取引をいいます。

付与日

「付与日」とは、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する契約が企業と取締役等との間で締結された日をいいます。

権利確定日

「権利確定日」とは、権利確定条件を達成するか否かが確定した日をいい、事前交付型においては、譲渡制限が解除されるか否かが確定した日がこれにあたり、事後交付型においては、株式の発行等が行われるか否かが確定した日がこれにあたります。

対象勤務期間

「対象勤務期間」とは、株式と引換えに提供されるサービスの提供期間をいい、通常は、契約において定められた期間となります。契約において対象勤務期間が定められていない場合は、付与日から権利確定日までの期間を対象勤務期間とみなします。

権利確定条件

「権利確定条件」とは、事前交付型においては譲渡制限が解除されるための条件を、事後交付型においては株式の発行等が行われるための条件をいいます。権利確定条件には、勤務条件や業績条件があります。

勤務条件

「勤務条件」とは、取締役等の一定期間の勤務や職務執行に基づく条件をいいます。

業績条件

「業績条件」とは、一定の業績(株価を含む。)の達成または不達成に基づく条件をいいます。

公正な評価額

「公正な評価額」とは、市場価格(市場において形成されている取引価格、気配値または指標その他の相場)に基づいて、契約条件等を反映するように必要に応じて調整を加えた合理的に算定された価額をいいます。また、単位当たりの公正な評価額を「公正な評価単価」といいます。

没収

「没収」とは、事前交付型において、権利確定条件が達成されなかったことによって、企業が無償で株式を取得することが確定することをいいます。また、「失効」とは、事後交付型において、権利確定条件が達成されなかったことによって、取締役等に株式が交付されないことが確定することをいい、「失効」と「没収」を合わせて「失効等」といいます。