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取締役の報酬等として株式を無償交付する取引の開示

取締役の報酬等として株式を無償交付する取引については、年度の財務諸表において、注記をする必要があります(取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い第20項)。

なお、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い第20項の注記事項に関する具体的な内容や記載方法の他、同取扱いに会計処理の定めのない事項に係る注記については、ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針第27項、第28項(2)、第29項、第30項、第33項および第35項の定めに準じて注記を行います(取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い第21項)。



事前交付型の注記

事前交付型については、以下の内容を注記します(取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い第20項)。


  1. 取引の内容、規模およびその変動状況
  2. 付与日における公正な評価単価の見積方法
  3. 権利確定数の見積方法
  4. 条件変更の状況

取引の内容、規模およびその変動状況

取引の内容、規模およびその変動状況は、各会計期間において権利未確定株式数が存在したものに限り以下の内容を注記します。


  1. 付与対象者の区分(取締役、執行役の別)および人数
  2. 当該会計期間において計上した費用の額とその科目名称
  3. 付与された株式数
  4. 当該会計期間中に没収した株式数、当該会計期間中に権利確定した株式数ならびに期首および期末における権利未確定残株式数
  5. 付与日
  6. 権利確定条件
  7. 対象勤務期間
  8. 付与日における公正な評価単価

上記「3」と「4」は、当該企業が複数の種類の株式を発行している場合には、株式の種類別に記載を行います。

事後交付型の注記

事後交付型については、以下の内容を注記します(取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い第20項)。


  1. 取引の内容、規模およびその変動状況
  2. 付与日における公正な評価単価の見積方法
  3. 権利確定数の見積方法
  4. 条件変更の状況

取引の内容、規模およびその変動状況

取引の内容、規模およびその変動状況は、各会計期間において権利未確定株式数が存在したものに限り以下の内容を注記します。ただし、「5」を除きます。


  1. 付与対象者の区分(取締役、執行役の別)および人数
  2. 当該会計期間において計上した費用の額とその科目名称
  3. 付与された株式数
  4. 当該会計期間中に失効した株式数、当該会計期間中に権利確定した株式数ならびに期首および期末における権利未確定残株式数
  5. 権利確定後の未発行株式数
  6. 付与日
  7. 権利確定条件
  8. 対象勤務期間
  9. 付与日における公正な評価単価

上記「3」「4」「5」は、当該企業が複数の種類の株式を発行している場合には、株式の種類別に記載を行います。

1株当たり情報に関する注記

1株当たり情報に関する注記において、事後交付型におけるすべての権利確定条件を達成した場合に株式が交付されることとなる契約は、潜在株式として取り扱い、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定において、ストック・オプションと同様に取り扱います(取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い第22項)。

この場合、業績条件が付されている場合は、条件付発行可能潜在株式と同様に取り扱い、勤務条件のみが付されている場合は、ワラントと同様に取り扱うことになると考えられます(同取扱い第53項)。

また、株式引受権の金額は1株当たり純資産の算定において、貸借対照表の純資産の部の合計額から控除します(同取扱い第22項また書き)。株式引受権をこのように取り扱うのは、新株予約権や非支配株主持分と同様に普通株主に関連しない項目と考えられるからです(同取扱い第54項)。

関連当事者との取引

取締役の報酬等として株式を無償交付する取引は、関連当事者との取引に関する開示を行う必要はありません(取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い第55項)。

取締役の報酬等として株式を無償交付する取引は、取締役等との取引であり、関連当事者との取引に該当すると考えられます。一方で、役員報酬は開示対象外とされています(関連当事者の開示に関する会計基準第9項(2))。

このように取締役の報酬等として株式を無償交付する取引は、関連当事者との取引に該当する面と該当しない面を併せ持っていることから、関連当事者との取引として開示すべきかが問題となりますが、以下の理由から開示対象外と考えられています(取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い第55項)。


  1. 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引においては、権利行使時に権利行使価格の払込みを受けて株式が交付されるストック・オプションとは異なり、交付する株式についての払込みがサービスの提供のみによってなされ、報酬費用の計上と株式の発行等(資本取引)が同額で行われるため、報酬費用とは別に株式の発行等に関する関連当事者との取引に関する注記を行う必要性が乏しいと考えられる。

  2. 関連当事者との取引として開示が求められる項目のうち、取引の内容や取引金額、取引条件に関する情報は、概ね、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引における注記事項として開示されることとなり、利用者が取引内容や条件を判断するための一定の情報は提供されるものと考えられる。