外貨建取引
外貨建取引は、売買価額その他取引価額が外国通貨で表示されている取引のことです。「外貨建取引等会計処理基準注解(注1)」では、外貨建取引の具体例を以下のように記述しています。
外貨建取引には、(イ)取引価額が外国通貨で表示されている物品の売買又は役務の授受、(ロ)決済金額が外国通貨で表示されている資金の借入又は貸付、(ハ)券面額が外国通貨で表示されている社債の発行、(ニ)外国通貨による前渡金、仮払金の支払又は前受金、仮受金の受入及び(ホ)決済金額が外国通貨で表示されているデリバティブ取引等が含まれる。
取引発生時の会計処理
外貨建取引が発生したときには、原則として、当該発生時の為替相場による円換算額で記録します。
例えば、アメリカの得意先に商品を1ドルで販売した場合、その時の為替相場が1ドル=100円であれば、売上は100円となります。また、売掛金についても、100円で資産計上されます。
アメリカの仕入先から商品を2ドルで仕入れた場合、その時の為替相場が1ドル=90円なら、仕入高は180円となり、負債に計上される買掛金も180円となります。
一取引基準と二取引基準
商品や製品の販売または仕入と代金の決済が同時に行われない場合、販売時や仕入時の為替相場と代金決済時の為替相場が異なっていることがあります。例えば、商品販売時の為替相場が1ドル=100円だったのに代金回収時は1ドル=95円になっているということが起こりえます。
このように販売時や仕入時と代金決済時とで為替相場が異なる場合、為替相場の変動から生じた損益をどのように処理すべきかが問題となります。
為替相場の変動の影響を売上や仕入等の修正として処理する方法を一取引基準、売上や仕入等と代金決済を別個の取引として処理する方法を二取引基準といいます。
一取引基準の論拠
一取引基準は、仕入や売上等の取引と決済取引を一つの取引とみなします。
資産の取得原価は、当該資産を取得するために要する貨幣支出額によって算定されるべきであるという考え方によれば、仕入から代金決済までを一つの取引として処理するのが妥当といえます。また、企業は、実際の支出額を考慮して、販売価額を決定するのであるから、一取引基準を採用する方が、企業の実務感覚を財務諸表に反映することができるともいえます。
例えば、1ドルの商品を販売した時の為替相場が1ドル=100円で、代金回収時が1ドル=98円だったとします。
一取引基準によって売上の会計処理をする場合、商品販売時の売上は100円となります。その後、代金を回収した時は 、98円しか入金されていないので、差額2円を売上の修正として処理します。最終的に損益計算書に計上される売上高は98円になります。
二取引基準の論拠
二取引基準は、仕入や売上等の取引と決済取引を別個の取引とみなします。
現行の企業会計においては、商品の売買活動と代金の決済活動は区別されていることから、外貨建取引についても両者を別個の取引と考えるべきといえます。
また、一取引基準を実務で採用することは、困難な面があります。例えば、当期に販売した商品の代金を次期に回収した場合、販売時と代金回収時の損益計算書が異なってしまいますが、このような場合に為替相場の変動を過去の期間損益計算の修正とするのは、実務上手間がかかってしまいます。もしも、海外から固定資産を購入した場合には、次期以降の決済額が減価償却計算にも影響を及ぼすことになるので、その修正は企業にとって多大な負担となります。
例えば、1ドルの商品を販売した時の為替相場が1ドル=100円で、代金回収時が1ドル=98円だったとします。
二取引基準によって売上の会計処理をする場合、商品販売時の売上は100円となります。その後、代金を回収した時は 、98円しか入金されていないので、差額2円は代金回収という財務活動から生じた費用として営業外損失に為替差損2円が計上されます。したがって、損益計算書の売上高は100円、営業外損失は2円となります。
なお、「外貨建取引等会計処理基準 一 3」では、以下のように記述されており、現行の企業会計では、二取引基準を採用していることがわかります。
外貨建金銭債権債務の決済(外国通貨の円転換を含む。)に伴って生じた損益は、原則として、当期の為替差損益として処理する。