外貨建資産及び負債の決算時の換算方法
企業の貸借対照表に計上される外貨建資産や外貨建負債は、その取引日や発生日から決算日までに為替相場が変動していることがあります。このような場合、決算時にいかなる為替相場を選択適用するのかが問題となります。
決算時の換算方法については、決算日レート法、流動・非流動法、貨幣・非貨幣法、テンポラル法等があります。
決算日レート法
決算日レート法は、外貨建資産及び負債を決算日の為替相場で換算する方法です。
決算日レート法は、単一の為替相場で外貨建資産及び負債を換算するので、実務上の手間がかからないという利点があります。また、外貨数値の大小や比率の関係が、邦貨換算後も維持されるといった利点もあります。
しかし、過去の取引で取得または発生した外貨建資産および負債は、取引時の為替相場で測定されています。これを決算日の為替相場で換算しなおすのは、属性を変更することになってしまうといった問題があります。
流動・非流動法
流動・非流動法は、外貨建資産及び負債のうち、流動資産と流動負債を決算日の為替相場で換算し、その他の項目は取引日の為替相場で換算する方法です。
国際的にも資産及び負債は、流動項目と非流動項目に分類表示する慣行となっているので、外貨建資産及び負債を流動・非流動法で換算することは、このような会計慣行と整合的といえます。また、短期支払能力の表示という観点からすると、流動項目についてのみ決算日の為替相場で換算するのが望ましいといえます。
しかし、流動項目とはいえ、前払金や前受金のように過去の取引日の為替相場で換算されている項目を決算日の為替相場で換算しなおすと、属性を変更してしまうという問題が生じます。
貨幣・非貨幣法
貨幣・非貨幣法は、貨幣性資産及び負債は決算日の為替相場で換算し、非貨幣性項目は取得日または発生日の為替相場で換算する方法です。
貨幣・非貨幣法では、貨幣性項目を決算日の為替相場で換算し、非貨幣性項目を取得日または発生日の為替相場で換算するため、貨幣性資産を回収可能価額、非貨幣性資産を取得原価で評価する取得原価主義会計と整合的であるといえます。
しかし、子会社株式の強制評価減のように非貨幣性項目のうち決算日の時価で評価しているものまで取得日や発生日の為替相場で換算するのは、合理的ではないという指摘があります。
テンポラル法
テンポラル法は、取得時または発生時の外貨で測定されている項目は取得時または発生時の為替相場で換算し、決算日の外貨で測定されている項目は決算日の為替相場で換算する方法です。
テンポラル法では、外貨建資産及び負債の属性を変更しないといった利点がありますが、複数の為替相場を適用しなければならないので、事務処理が煩雑であるといった欠点があります。