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取得原価主義会計

企業会計原則貸借対照表原則五では、資産の価額を取得原価を基礎として計上することを要請しています。

貸借対照表に記載する資産の価額は、原則として、当該資産の取得原価を基礎として計上しなければならない。

このような要請から、今日の企業会計は、貸借対照表からみると、取得原価主義会計ということができます。

取得原価主義の特徴

取得原価主義は、資産の価額の決定にその資産の取得に要した支出額を基礎とする考え方です。

そのため、資産の評価は取得原価で行われ、資産の保有中は時価が変動したとしても一切評価額に影響を与えません。例えば、土地を100万円で購入し、そのまま10年間保有している間に時価が150万円になっていたとしても、貸借対照表に計上される土地の価額は100万円のままです。もしも、土地を150万円に評価替えすると、売却する前に50万円の利益が計上されてしまいます。この50万円については、未だ買い手が確定していませんし、150万円の資金の流入もありません。このような未だ確定していない利益を未実現利益と言います。

未実現利益を利益として計上すると、資金の流入がないのに配当として企業財産が社外に流出してしまいます。これは財務の健全性の観点から好ましいことではないので、未実現利益の計上は認められません。

しかし、資産を取得原価のまま評価し続けると時価と帳簿価額が大きくかけ離れてしまうといった問題があります。これは取得原価主義会計に対してしばしば起こる批判ですが、このような批判があるにもかかわらず、今日、取得原価主義会計が採用されているのは、以下のような利点が存在しているからです。

  1. 資産の評価額やその資産を費消した時の費用価額の決定を取得という客観的事実に基づいて行うことから、検証可能性がある。
  2. 会計処理がわかりやすく、実務的に明確であり、統一しやすいといった実行可能性がある。
  3. 資金流入のない未実現利益を排除できるので、財務の健全性(保守主義性)を保てる。
  4. 取得した資産を原価で評価することは、その資産を売却した時にどれだけの利益を獲得できたかを把握するのに容易である。また、利益は投下した資金を超える資金流入があった時に生じるものであるが、これは投下資本の回収や維持の計算に役立つ。

費用配分の原則

期間損益計算を行う上で、重要となるのが、費用の計上額です。費用性資産の評価は取得原価で行われるので、これらが販売、消費された時に計上される費用の額は、取得原価が基礎となります。

当期に販売や消費された費用性資産は当期の費用となり、当期に販売や消費されずに残った費用性資産は時期以降の費用となります。このように費用性資産の取得原価を当期と時期以降に期間配分する考え方を費用配分の原則と言います。

例えば50円切手を100枚購入し、そのうち80枚を当期に使い、20枚が残ったとします。この場合、当期に計上される通信費は4,000円となり、残高1,000円は貸借対照表に資産として計上され、時期以降に使用されると使用された会計期間の費用となります。

費用配分の手続きは、その資産の特性によって異なります。材料や商品など個数、長さ、重さなどを基準に払出が行われる資産は、それらに単価を乗じて算出された価額が費用となります。また、機械や備品のように使用することで価値が減少していく資産については、資産価値の減少分を当期の費用とし、残りを時期以降の費用にします。

このように費用配分の原則は、費用性資産の取得原価のうち、先に当期の費用となる価額が計算された後、その残りとして貸借対照表に計上される資産価額が決定されます。資産の価値がいくらかを先に評価して貸借対照表に計上するわけではありません。貸借対照表が、資産価値を表しているのではなく、単なる残高表と言われる理由がここにあります。