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有形固定資産の費用配分

有形固定資産は、その全体をもって企業活動に用いられます。そのため、具体的な消費量を把握できる棚卸資産とは異なり、有形固定資産は、その価値の減少分を当期の費用として計上し、価値減少分だけ貸借対照表に計上される有形固定資産の価額を減額することになります。

正規の減価償却

有形固定資産の費用配分は、減価償却という手続きにより行われます。減価償却とは、有形固定資産の原価を耐用年数にわたって、各会計期間にあらかじめ定められた方法で計画的、規則的に配分し、同額だけ有形固定資産の価額を減少させる会計上の手続きです。

有形固定資産の価値の減少には、使用、時間の経過、災害や事故によって価値が減少する物質的減価と技術の進歩や発明などによる陳腐化、生産方式や産業構造の転換による不適応化によって価値が減少する機能的減価があります。これら有形固定資産の価値の減少が生じた時に資産価値を減額し、同額を費用として計上するのが、あるべき会計処理といえますが、実際にはこのような価値の減少を把握するのは困難です。そこで、あらかじめ定められた方法で、計画的、規則的に費用配分を行う減価償却が必要となるのです。このような減価償却を正規の減価償却といいます。

耐用年数と残存価額の見積もり

減価償却によって固定資産の原価を各会計期間に費用配分するためには、耐用年数と残存価額をあらかじめ見積もらなければなりません。当該固定資産を5年使用するのか10年使用するのかで、各会計期間に費用配分される価額が変わってくるからです。

耐用年数

耐用年数の見積もりには、物質的減価と機能的減価を考慮する必要があります。ただし、物質的減価の中には災害や事故といった不測の事態によって生じる価値の減少(偶発減価)が含まれていますが、これは、耐用年数の見積もりからは除外されます。

また、機能的減価も耐用年数の見積もり段階では、陳腐化や不適応化を予測するのは困難ですが、今日のように技術革新が目覚ましい時代においては、無視することはできません。そのため、耐用年数を見積もる際には、過去の統計資料などを基に機能的減価も合理的に見積もる必要があります。

耐用年数には、一般的耐用年数と個別的耐用年数があります。

一般的耐用年数は、社会一般的見地から固定資産の種類に応じて画一的に決められた耐用年数です。一般的耐用年数は、主観が入らないので、広く社会に受け入れられやすいといった利点があります。実務においては、一般的耐用年数が用いられることが多く、主に税法の法定耐用年数が採用されています。

個別的耐用年数は、個々の企業の状況に合わせて見積もられる耐用年数です。同種の固定資産であっても、企業によって使用時間や使用方法が異なるため、耐用年数が異なることはよくあります。そのため、個別的耐用年数は、企業の実態を反映したものになりやすいといった利点があります。しかし、耐用年数の見積もりに主観が入るといった問題点も指摘されます。

残存価額

残存価額は、固定資産の耐用年数到来時の売却価額や利用価額を意味します。耐用年数が到来した固定資産は、その時点で価値がゼロとなるわけではなく、利用価値が残っていたり、売却が可能であったりします。そのため、取得原価から残存価額を差し引いた価額が減価償却によって各会計期間に費用配分されることになります。

なお、残存価額をゼロと見積もった場合には、帳簿上に備忘価額1円を残します。この場合、減価償却の対象となるのは、取得原価から1円を差し引いた価額となります。