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棚卸資産の取得原価の決定

棚卸資産の取得原価の決定方法は、購入した棚卸資産と生産した棚卸資産とで異なります。

購入した棚卸資産

購入した棚卸資産の取得原価は、購入代価に付随費用を加算して算定されます。

購入代価は、仕入れた棚卸資産の値段(送状価額)から値引額、たくさん購入したことによるおまけ(割戻額)などを控除した価額をいいます。

また、付随費用は、棚卸資産を仕入れた時に発生した引取運賃や手数料などのことです。

現金割引の取り扱い

値引や割戻と似たものに現金割引(仕入割引)があります。現金割引は、代金の決済を早めることで、その分の利息相当額を仕入先に減額してもらうことをいいます。例えば、1ヶ月後に支払う予定になっている仕入代金を棚卸資産の購入時に現金で支払って、1ヶ月間の利息相当額を安くしてもらうといった場合が現金割引です。

現金割引を棚卸資産の取得原価から控除するかどうかは、棚卸資産の仕入という活動を購入から代金の決済までととらえるか、購入時のみととらえるかによって異なります。

取得原価から控除する考え方

現金割引を棚卸資産の取得原価から控除するという考え方は、仕入活動を購入から代金決済までととらえます。つまり、最終的な現金支払額こそが、その資産の価値を表す取得原価と考えます。

しかし、現金割引を取得原価から控除すると、まったく同じ資産でも、代金を早く支払うか遅く支払うかによって資産の価値が変わってしまうことになります。

なお、現金割引を取得原価から控除する考え方でも、現金割引を受けたか受けなかったかにかかわらず、取得原価から現金割引を控除するべきとする考え方もあります。この考え方では、仕入価額には、すでに代金を後払いすることが予定されているので、その分の利息相当額が最初から上乗せされているととらえます。この場合、代金を後払いした時には、利息相当額を支払利息として損益計算書に計上します。

取得原価から控除しない考え方

現金割引を棚卸資産の取得原価から控除しない考え方は、資産の購入を仕入活動とし、代金の決済を財務活動ととらえます。

現金割引が、代金の早期決済による利息ととらえるなら、それは財務収益と考えることができます。この考え方では、現金割引を受けた時に営業外収益が計上されます。

現在の企業会計においては、仕入活動から財務活動が切り離されており、現金割引は財務活動から生じたものとして会計処理が行われます。また、実務の簡略化の観点から、現金割引を受けた時に営業外収益を計上します。

生産した棚卸資産

自社で製造した棚卸資産については、適正な原価計算基準に従って計算された製造原価を取得原価とします。製造原価は、棚卸資産の製造に要したすべての費用を集計したもので、販売費及び一般管理費は除外されます。

我が国でも、原価計算基準が存在しており、当基準に準拠して計算された製造原価を棚卸資産の取得原価とします。なお、原価計算基準の詳細は割愛します。