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減価償却方法の変更

有形固定資産の減価償却は、最初に決めた方法で耐用期間が到来するまで行うのが原則です。これは、継続性の原則によって要請されるもので、有形固定資産の減価償却だけでなく、棚卸資産や有価証券などの会計処理にも継続性は要請されます。しかし、正当な理由がある場合には、会計処理の変更は認められています。

正規の減価償却と減価償却方法の変更

有形固定資産は、特定の資産を除き、その価値の減少を把握することが困難です。しかし、価値の減少を把握できないといっても、時の経過や使用によって資産価値が減少していることは事実なので、これを財務諸表に反映させる必要があります。

正確な価値の減少はわからなくても、事前に耐用年数を見積もることができるのであれば、その期間にわたって固定資産の取得原価を費用配分することは可能です。そこで、考えられたのが減価償却という方法です。

減価償却には、定額法や定率法といった様々な方法が認められていますが、これらの方法は、固定資産の価値の減少を正確にとらえたものではありません。すなわち、採用する減価償却方法と資産価値の減少の間には、何の因果関係もないということです。それでも、減価償却が適正な期間損益計算の観点から妥当なものとして扱われるのは、いったん採用した減価償却方法を固定資産の使用開始から終了まで当初の計画通りに規則的に費用配分するからです。つまり、正規の減価償却が行われている限りにおいて、その妥当性が保証されているのです。

正規の減価償却を前提にすると、有形固定資産の減価償却方法の変更には正当性を認めることはできません。ただし、会計基準や法令等の改正により今まで採用していた減価償却方法が認められなくなり他の減価償却方法に変更しなければならない場合には、正当な理由による減価償却方法の変更となります。

なお、減価償却方法を変更した場合、その会計処理には、以下の3つの方法が考えられます。

  1. 変更後の新減価償却方法を最初から適用していたものとし、旧減価償却方法を適用した場合との差額を過年度損益修正として損益計算書に反映させ、当期以降の減価償却費は新減価償却方法で計算した減価償却費を計上する方法
  2. 減価償却方法を変更した会計年度から新減価償却方法を適用して減価償却費を計上し、過年度の修正は行わず、変更による影響は変更後の会計期間で吸収する方法
  3. 当初から新減価償却方法を適用していたものとして、過年度の財務諸表を修正する方法(ただし、減価償却方法の変更の場合には実務では行われない)

1と3の方法は、固定資産の使用開始から新減価償却方法を適用していたものとして扱われるので、正規の減価償却の趣旨にあう会計処理の変更といえます。2の方法に関しては、正規の減価償却の趣旨とあわないといえますが、固定資産の利用状況に変化があり、その減価の実態が変化したことに合わせた減価償却の方法なら、変更に正当な理由が認められるといえるので、その影響は変更後の会計期間に反映させるのが妥当と考えます。