HOME > 各論 > リース会計 > 所有権移転ファイナンス・リース取引 > 借手の会計処理

 

所有権移転ファイナンス・リース取引の借手の会計処理

リース取引が所有権移転ファイナンスリース取引に該当した場合、リース物件の借手は通常の売買取引に準じて会計処理を行います。

リース取引の具体例

以下にリース取引の具体例を示します。

取引条件

  1. リース期間はx1年3月31日からx3年3月31日
  2. 解約不能のリース期間は2年
  3. リース期間満了後に借手に所有権が移転する
  4. リース資産の経済的耐用年数は3年、稼働はx1年4月1日から
  5. リース料総額は6,914万円
  6. 毎年3月31日に3,457万円を後払い
  7. 借手の見積現金購入価額は6,000万円
  8. 借手の追加借入利子率は10%
  9. リース物件の残存価額は600万円
  10. 減価償却は定額法で行う
  11. 決算日は3月31日

リース取引の判定

解約不能のリース期間があり、リース期間満了後にリース物件の所有権が借手に移転するので、所有権移転ファイナンス・リース取引に該当します。

x1年3月31日の会計処理

x1年3月31日の貸借対照表は以下の通りです。

x1年の貸借対照表

ファイナンスリース取引なので、通常の売買取引に準じて会計処理が行われます。借りたリース物件はリース資産として資産にリース料はリース債務として負債に計上します。

リース料総額6,914万円からリース期間にわたる利息見積額の総額914万円を差し引いた6,000万円がリース資産の取得原価となります。また、リース債務も同額となります。

x1年4月1日からx2年3月31日の会計処理

x2年3月31日の貸借対照表とx1年4月1日からx2年3月31日の損益計算書は以下の通りです。

x2年の貸借対照表と損益計算書
  1. 1回目のリース料の支払額3,457万円のうち支払利息は600万円(リース債務残高6,000万円×10%)となります。
  2. リース債務の減少額は2,857万円(リース料3,457万円-支払利息600万円)なので、x2年末のリース債務残高は3,143万円(x1年末のリース債務残高6,000万円-リース債務減少額2,857万円)となります。
  3. リース資産の減価償却費は、リース資産の取得原価6,000万円から残存価額600万円を差し引いた5,400万円を3年の定額法で償却するので、1,800万円となります。なお、所有権移転ファイナンス・リース取引の場合、減価償却に用いる耐用年数は、リース期間ではなく、通常の固定資産と同様に経済的耐用年数となります。
  4. リース資産の残高は、取得原価6,000万円から減価償却費1,800万円を差し引いた4,200万円となります。

x2年4月1日からx3年3月31日の会計処理

x3年3月31日の貸借対照表とx2年4月1日からx3年3月31日の損益計算書は以下の通りです。

x3年の貸借対照表と損益計算書
  1. 2回目のリース料の支払額3,457万円のうち支払利息は314万円(リース債務残高3,143万円×10%)となります。
  2. リース債務の減少額は3,143万円(リース料3,457万円-支払利息314万円)なので、x3 年末のリース債務残高はゼロ(x2年末のリース債務残高3,143万円-リース債務減少額3,143万円)となります。
  3. リース資産の減価償却費は、x2年と同じです。
  4. リース資産の残高は、x2年末のリース資産残高4,200万円から減価償却費1,800万円を差し引いた2,400万円となります。

x3年4月1日からx4年3月31日の会計処理

x4年3月31日の貸借対照表とx3年4月1日からx4年3月31日の損益計算書は以下の通りです。

x4年の貸借対照表と損益計算書
  1. x3年でリース契約は終了しているので、リース料の支払いはありません。
  2. リース資産の減価償却費は、x2年と同じです。
  3. リース資産の残高は、x3年末のリース資産残高2,400万円から減価償却費1,800万円を差し引いた600万円となります。

仕訳

簿記を学習されている方の参考に以下に上記取引の全仕訳を示します。

所有権移転ファイナンス・リース取引の借手の全仕訳