HOME > 総論 >

 

原価の本質

ある製品やサービスの原価がいくらかを計算するのが原価計算です。

では、原価計算で計算される原価とはどういったものなのでしょうか?

原価とは、特定の目的のために費消された経済的価値を貨幣額で測定したものです。

ここで、特定の目的とは、製品の生産販売、部門用役の供給、材料や機械設備の取得、代替案の選択などを意味しています。すなわち、原価とは、有形・無形の経済的諸資源を獲得または創造するにあたって、費消された、または費消されるべき価値測定額となります。

原価の一般概念

上記のように定義された原価の一般概念は、以下のような特徴を持っています。

価値犠牲の測定額

原価は、価値犠牲の測定額です。その測定額は、過去の経済的犠牲だけでなく、未来の測定値や機会原価も含みます。

経営目的関連性

原価は、経営目的に関連するものです。経営目的には、生産や販売だけでなく、財務や購買も含まれます。

取得原価も含む

工企業では、原価の流れは、購買、製造、販売に関係づけられます。そのため、製造原価や販売費だけでなく、取得原価も原価に含まれます。

経営上のリスクを含む

経営活動には、必ずリスクが伴います。そのため、リスクも原価の一要素として評価されます。したがって、リスクに備えるために負担した保険料が原価を構成するのはもちろんのこと、機会原価としてリスクを測定した場合には機会原価も原価を構成します。

支出原価と機会原価

原価は、経済的犠牲を貨幣額で測定しますが、その測定方法により、支出原価と機会原価に区分されます。

支出原価

支出原価は、特定の目的のために犠牲にした経済的価値をその取得のために支払った貨幣支出額に基づいて測定した原価です。

機会原価

機会原価は、特定の目的のために犠牲にされる経済的価値を他の代替的目的に振り向けたなら得られたであろう利益に基づいて測定した原価です。別の言い方をすると、ある経営目的の遂行によって断念しなければならない利益が機会原価です。

原価計算制度における原価

原価計算基準3では、原価計算制度における原価を以下のように規定しています。

原価計算制度において、原価とは、経営における一定の給付にかかわらせて、は握された財貨又は用役(以下これを「財貨」という。)の消費を、貨幣価値的に表したものである。

また、原価計算制度において、原価は以下の4つの特徴を有しています。

  1. 経済価値の消費
  2. 給付に転嫁される
  3. 経営目的に関連
  4. 正常的

経済価値の消費

原価は、経済価値の消費である。経営の活動は、一定の財貨を生産し販売することを目的とし、一定の財貨を作り出すために、必要な財貨すなわち経済価値を消費する過程である。原価とは、かかる経営過程における価値の消費を意味する。

原価は、経済価値の消費なので、貨幣額で測定できるものでなければなりません。また、経営活動のために消費される必要があるので、購入しただけでは原価とはなりません。

給付に転嫁される

原価は、経営において作り出された一定の給付に転嫁される価値であり、その給付にかかわらせては握されたものである。ここに給付とは、経営が作り出す財貨をいい、それは経営の最終給付のみでなく、中間的給付をも意味する。

経営過程において消費された財貨の価値は、作り出された給付に移転します。したがって、原価は、給付と関連して把握されます。なお、給付には、製品のような最終給付だけでなく、半製品や仕掛品などの中間的給付も含まれます。

経営目的に関連

原価は、経営目的に関連したものである。経営の目的は、一定の財貨を生産し販売することにあり、経営過程は、このための価値の消費と生成の過程である。原価は、かかる財貨の生産、販売に関して消費された経済価値であり、経営目的に関連しない価値の消費を含まない。財務活動は、財貨の生成および消費の過程たる経営過程以外の、資本の調達、返還、利益処分等の活動であり、したがってこれに関する費用たるいわゆる財務費用は、原則として原価を構成しない。

原価は、生産、販売という経営目的に関連した価値の消費に限定されます。そのため、資本の調達、返還、利益処分などの財務活動から発生した費用は原価を構成しません。したがって、支払利息は原価とはなりません。

正常的

原価は、正常的なものである。原価は、正常な状態のもとにおける経営活動を前提として、は握された価値の消費であり、異常な状態を原因とする価値の減少を含まない。

原価は、正常な状態における経営活動を前提として把握された経済的価値の消費です。そのため、異常な状態を原因として発生した経済的価値の減少は原価には含まれません。

ここで異常は、質的異常と量的異常に分類されます。質的異常は、自然災害や異常な事故など経営者が予測しえない原因で発生した異常です。一方の量的異常は、作業ミス、機械設備の故障など、経営者が予測できるものですが、その発生量が通常範囲を超えているものです。