費目別計算
原価計算基準7では、実際原価の計算手続について以下のように規定しています。
実際原価の計算においては、製造原価は、原則として、その実際発生額を、まず費目別に計算し、次いで原価部門別に計算し、最後に製品別に集計する。販売費および一般管理費は、原則として、一定期間における実際発生額を、費目別に計算する。
実際原価の計算は、費目別計算、部門別計算、製品別計算の順に行われます。したがって、費目別計算は、実際原価の計算における第一段階の計算手続となります。
製造原価要素の分類基準
原価計算基準8では、製造原価要素の分類基準を以下のように規定しています。
形態別分類
形態別分類は、原価計算基準8(一)で以下のように説明されています。
形態別分類とは、財務会計における費用の発生を基礎とする分類、すなわち原価発生の形態による分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを材料費、労務費および経費に属する各費用に分類する。
形態別分類では、製造原価要素は、材料費、労務費、経費に分類されます。
材料費
材料費は、物品の消費によって生ずる原価であり、以下のように細分されます。
- 素材費(又は原料費)
製品の素材となる物品の消費によって発生する原価。素材費(材料費)は、加工されても元の形態を保って製品の一部を構成する原価です。原料費は、化学的な変化を受けて製品の一部を構成する原価です。 - 買入部品費
外部から購入した物品をそのまま製品に組み込んだ場合に発生する原価。 - 燃料費
燃料として用いられる重油や石炭などの消費によって発生する原価。 - 工場消耗品費
サンドペーパーや使い捨ての作業用手袋などの工場消耗品の消費によって発生する原価。 - 消耗工具器具備品費
工具器具備品のうち、耐用年数が1年未満または取得原価が僅少なため固定資産計上されなかった物品の消費によって発生する原価。ドライバー、レンチ、スパナといった工具、机やイスなどの備品が具体例です。
労務費
労務費は、労働用役の消費によって生ずる原価であり、以下のように細分されます。
- 賃金(基本給のほか割増賃金を含む。)
製品の製造に従事する工員に支給される給与。基本給だけでなく、時間外手当や休日出勤手当などの割増賃金も含まれます。 - 給料
製造関係の従業員に支給される給与。 - 雑給
製造関係の臨時工などに支給される給与。 - 従業員賞与手当
製造関係の従業員に支給される賞与。通勤手当や家族手当などの諸手当も含まれます。 - 退職給与引当金繰入額
退職金の規定にしたがって支給される退職金の引当金繰入額(退職給付費用)のうち製造関係の従業員に対するもの。 - 福利費(健康保険料負担金等)
製造関係の従業員に対する健康保険や雇用保険などの保険料のうち会社負担額。
経費
経費は、材料費、労務費以外の原価要素であり、減価償却費、たな卸減耗費、福利施設負担額、賃借料、修繕料、電力量、旅費交通費等の諸支払経費に細分されます。
原価要素の形態別分類は、財務会計における費用の発生を基礎とする分類であるから、原価計算は、財務会計から原価に関するこの形態別分類による基礎資料を受け取り、これに基づいて原価を計算する。この意味でこの分類は、原価に関する基礎的分類であり、原価計算と財務会計との関連上重要である。
機能別分類
原価計算基準8(二)では、製造原価要素の機能別分類を以下のように説明しています。
機能別分類とは、原価が経営上のいかなる機能のために発生したかによる分類であり、原価要素は、この分類基準によって、これを機能別に分類する。
機能別分類では、製造原価要素は、材料費、賃金、経費を以下のように分類します。
材料費
- 主要材料費
- 補助材料費
(1)修繕材料費
(2)試験研究材料費等 - 工場消耗品等
形態別分類における素材費が、製品の製造のために直接消費されれば主要材料費となります。また、同じ素材費でも、機械の修理に消費されれば修繕材料費になり、研究開発のために消費されれば試験研究材料費となります。
賃金
- 作業種別直接賃金
- 間接作業賃金
- 手待賃金等
形態別分類における賃金は、直接工賃金と間接工賃金に分類されます。
このうち直接工賃金は、機能別に分類すると上記のようになります。直接工が、製品の直接作業に従事して発生した賃金は作業種別直接賃金に分類されますが、同じ直接工でも、間接作業に従事して発生した賃金は間接作業賃金に分類されます。
また、直接工が作業を待っている間に発生した賃金は手待賃金に分類されます。
経費
経費は、各部門の機能別経費に分類されます。製造部経費、動力部経費、修繕部経費などが具体例です。
製品との関連における分類
原価計算基準8(三)では、製造原価要素の製品との関連における分類を以下のように説明しています。
製品との関連における分類とは、製品に対する原価発生の態様、すなわち原価の発生が一定単位の製品の生成に関して直接的に認識されるかどうかの性質上の区別による分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを直接費と間接費とに分類する。
1 直接費は、これを直接材料費、直接労務費および直接経費に分類し、さらに適当に細分する。
2 間接費は、これを間接材料費、間接労務費および間接経費に分類し、さらに適当に細分する。
必要ある場合には、直接労務費と製造間接費とを合わせ、又は直接材料費以外の原価要素を総括して、これを加工費として分類することができる。
材料費、労務費、経費が直接費に分類されるためには、製造原価の発生額が、製品との関連で直接認識できること、製品との関連で直接認識することが重要であること、経済的に一定単位の製品に跡付けられることが必要と考えられます。
また、直接労務費と製造間接費の合計、または直接材料費以外の製造原価要素は、加工費として分類することができます。
操業度との関連における分類
原価計算基準8(四)では、製造原価要素の操業度との関連における分類を以下のように説明しています。
操業度との関連における分類とは、操業度の増減に対する原価発生の態様による分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを固定費と変動費とに分類する。ここに操業度とは、生産設備を一定とした場合におけるその利用度をいう。固定費とは、操業度の増減にかかわらず変化しない原価要素をいい、変動費とは、操業度の増減に応じて比例的に増減する原価要素をいう。
操業度は、生産設備を一定とした場合におけるその利用度のことであり、固定費は操業度に関わらず発生額が一定である製造原価要素、変動費は操業度に応じて増減する製造原価要素です。
操業度の測定尺度は、直接作業時間や機械作業時間が代表的ですが、単一製品を生産している場合には生産量も操業度として用いることが可能です。
また、操業度を販売活動まで広げて解釈すれば、販売量や売上高も操業度の測定尺度として利用できます。
操業度との関連における分類では、製造原価要素は準固定費や準変動費に分類される場合もあります。
- 準固定費
ある範囲内の操業度の変化では固定的であり、これをこえると急増し、再び固定化する原価要素。監督者給料等。 - 準変動費
操業度がゼロの場合にも一定額が発生し、同時に操業度の増加に応じて比例的に増加する原価要素。電力料等。
準固定費または準変動費は、固定費又は変動費とみなして、これをいずれかに帰属させるか、もしくは固定費と変動費とが合成されたものであると解し、これを固定費の部分と変動費の部分とに分解します。
原価の管理可能性に基づく分類
原価計算基準8(五)では、原価の管理可能性に基づく分類について以下のように説明しています。
原価の管理可能性に基づく分類とは、原価の発生が一定の管理者層によって管理しうるかどうかによる分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを管理可能費と管理不能費とに分類する。下級管理者層にとって管理不能費であるものも、上級管理者層にとっては管理可能費となることがある。
原価が管理可能であるかどうかは、期間や経営管理者によって異なります。
短期的には管理不能な原価であっても、長期的には管理可能な原価となります。また、上位の経営管理者にとっては管理可能な原価であっても、下位の経営管理者にとっては管理不能な原価となることがあります。
したがって、管理可能費とは、短期間にある経営管理者によって発生額を引き下げることができる原価となります。
ただし、ある原価に対して、特定の経営管理者に全ての権限が与えられることは稀であるため、管理可能かどうかは、ある経営管理者が、その原価に重要な影響を及ぼすことができるかどうかによって分類することになります。