製造間接費の配賦計算の種類
製造間接費の配賦計算には、部門別計算を行うか、配賦基準の使用方法をどうするか、どのように配賦率を算定するかといった視点があります。
そして、これら視点の違いにより、様々な配賦方法が考えられます。
部門別計算を行うか
部門別計算を行うかどうかという視点からは、製造間接費の配賦は、総括配賦と部門別配賦の2つの方法が考えられます。
総括配賦
総括配賦は、費目別計算で把握した工場全体の製造間接費を適切な配賦基準(総括配賦率)によって各製品に配賦する方法です。
工場の規模が小さく部門別計算の必要性に乏しい場合に総括配賦は採用されますが、製造間接費配賦額の信頼性が低いという欠点があります。
部門別配賦
部門別配賦は、工場全体の製造間接費を各製造部門に集計した後、部門別製造間接費を各製品に適切な配賦率を用いて配賦する方法です。製造間接費を各製造部門に集計する際に部門別計算が行われます。
部門別配賦によれば、活動内容の異なる部門ごとの製造間接費を発生状況に合わせて、各製品に配賦できます。
配賦基準の使用方法をどうするか
製造間接費を各製品に配賦する場合、配賦基準の使用方法をどうするかを決定しなければなりません。
配賦基準の使用方法には、一括配賦、費目群別配賦、費目別配賦があります。
一括配賦
一括配賦は、製造間接費を単一の基準を使用して、一括で各製品に配賦する方法です。
一括配賦は、計算が簡略という利点はあるものの、性格の異なる製造間接費を単一の基準で配賦すると計算の信頼性が損なわれる可能性があるという欠点を持っています。
費目群別配賦
費目群別配賦は、製造間接費を固定費と変動費、材料関係と機械関係など、それぞれの費目群に合った配賦基準を設定して各製品に配賦する方法です。
費目別配賦
費目別配賦は、製造間接費を費目別に配賦基準を設定して各製品に配賦する方法です。
計算に手間がかかる欠点はありますが、最も理論的な配賦方法と言えます。
どのように配賦率を算定するか
どのように配賦率を算定するかの視点からは、実際配賦と予定配賦が考えられます。
実際配賦
実際配賦は、製造間接費の実際発生額から算定した実際配賦率を用いて各製品に製造間接費を配賦する方法です。
実際配賦率は、原価計算期間が終了した後に算定されます。
予定配賦
予定配賦は、あらかじめ算定した予定配賦率を用いて各製品に製造間接費を配賦する方法です。
予定配賦率は、会計期間における予測値に基づいて算定される配賦率であり、実際配賦率の短期平均値の見積りです。
正常配賦
予定配賦率に似た配賦率に正常配賦率があります。正常配賦率は、実際配賦率の長期の見積りから算定した配賦率です。
予定配賦率が短期の見積りであり計算の迅速性を重視しているのに対して、正常配賦率は長期的視点から操業度の変動によるブレを除去しており、配賦額の正常性を重視しています。
配賦計算の方法
製造間接費を各製品に配賦するには、総括配賦か部門別配賦か、一括配賦か費目群別配賦か費目別配賦か、実際配賦か予定配賦かを選択しなければなりません。
例えば、部門別計算を行い、配賦基準に費目群別配賦を採用し、配賦率に予定配賦率を使用するといった具合です。
部門別計算を行うか、配賦基準の使用方法をどうするか、どのように配賦率を算定するかは、各工場の実情に合わせて選択する必要があります。
製造間接費の配賦計算の具体例
乙工場では、5月度にA製品を10,000個、B製品を6,000個製造しました。両製品ともすべて完成しています。
工場全体で製造間接費が8,000,000円発生したので、以下の資料に基づいて各製品に配賦しました。
- 部門別計算は行っていない。
- 製造間接費は、直接作業時間を基準に一括配賦する。
- 各製品の単位当たり実際直接作業時間は、A製品は1時間、B製品は5時間であった。
- 製造間接費は各製品に実際配賦する。
各製品の実際直接作業時間
A製品とB製品の実際直接作業時間は以下の通りです。
- A製品=10,000個×1時間=10,000時間
- B製品=6,000個×5時間=30,000時間
実際配賦率の計算
製造間接費の実際配賦率は以下の計算より200円/時間です。
- 実際配賦率
=8,000,000円/(10,000時間+30,000時間)
=200円/時間
製造間接費の実際配賦額
各製品への製造間接費の実際配賦額は以下の通りです。
- A製品=10,000時間×200円/時間=2,000,000円
- B製品=30,000時間×200円/時間=6,000,000円
なお、製品原価には、製造間接費だけでなく、直接材料費、直接労務費、直接経費も含まれます。ここでは、計算の簡略化のため、これら直接費の計算は省略しています。