材料の値引または割戻の処理
材料の購入原価は、購入代価に材料副費を加えた価額として計算されます。ここで、購入代価は、仕入先から送付される送り状の記載価額から値引額および割戻額を控除して計算します。原価計算基準11(四)でも、値引または割戻の処理について以下のように規定しています。
購入した材料に対して値引又は割戻等を受けたときは、これを材料の購入原価から控除する。ただし、値引又は割戻等が材料消費後に判明した場合には、これを同種材料の購入原価から控除し、値引又は割戻等を受けた材料が、判明しない場合には、これを当期の材料副費等から控除し、又はその他適当な方法によって処理することができる。
値引または割戻は購入原価から控除する
購入した材料に対して値引または割戻を受けた場合には、購入原価から控除するのが原則です。
しかし、値引や割戻は、材料の購入時点では受けられるかどうか確定していないことがあります。特に割戻の場合は、1ヶ月や3ヶ月など、一定期間の材料の購入価額がある金額以上になった時にリベートとして受け取れるという契約になっていることがあり、材料の購入から割戻を受けるまでの期間が長くなることがあります。
そのため、値引または割戻を受けた時点で、それらの対象となった材料を消費していた場合には、購入原価から控除するのが困難になるので、同種材料の購入原価から控除する方法が認められています。
また、値引や割戻を受けたものの、対象材料が判明しないこともあります。このような場合には、材料副費などから控除するか、その他適当な方法によって処理することも認められています。
現金割引の処理
一定期間以内に材料の仕入代金を支払った場合に仕入先から割引を受けることがあります。
このような現金割引は、仕入代金を早期に支払うという財務活動から生じたものであるから、財務会計上は財務収益として処理し、材料の購入原価から差し引くことはしません。
値引と割戻の処理の具体例
A材料とB材料を仕入れて製品を加工している乙社の1月の材料の購入状況は以下の通りです。
- A材料:単価150円、購入数量400個
- B材料:単価200円、購入数量500個
- A材料につき2,000円の値引を受けた。
- B材料につき3,000円の割引を受けた。
- 引取費用は、A材料が1,000円、B材料が1,500円かかっている。
- 検収費などの内部副費は、A材料とB材料に共通して31,600円発生した。内部副費は、材料の購入代価を基準に配賦する。
- 仕入先から7,900円の割戻を受けたが、対象材料が不明のため内部副費から控除する。
購入代価の計算
A材料とB材料の購入代価を計算すると以下のようになります。
- A材料=150円×400個-2,000円=58,000円
- B材料=200円×500個=100,000円
B材料は、3,000円の割引を受けていますが、割引は財務収益として処理するため、B材料の購入代価からは控除しません。
内部副費と割戻の計算
仕入先から受けた7,900円の割戻は、対象材料が不明のため、内部副費から控除します。
- 31,600円-7,900円=23,700円
割戻控除後の内部副費23,700円は、購入代価を基準にA材料とB材料に配賦します。
- A材料への内部副費の配賦額=23,700円×58,000円/(58,000円+100,000円)=8,700円
- B材料への内部副費の配賦額=23,700円×100,000円/(58,000円+100,000円)=15,000円
材料の購入原価
材料の購入原価は、購入代価に引取費用と内部副費を加算するので以下のようになります。
- A材料=58,000円+1,000円+8,700円=67,700円
- B材料=100,000円+1,500円+15,000円=116,500円