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原価計算とは

100円で販売されている缶コーヒーの原価はいくらなのか。

消費者の立場から、このような疑問を持ったことがある人は多いと思います。スニーカーの原価、テレビの原価、自動車の原価など、企業が製品を製造する場合、必ず製品を作るために経済価値が消費されます。

この製品を作るために費消した経済価値を原価と言います。そして、原価計算は、一般的には、財貨を生産し用役を提供するにあたり消費された経済財の価値犠牲を測定するための技術、概念の総称であると定義されます。

原価計算の目的は、個々の製品の販売価格を決定するための基礎として原価を計算することにありますが、財務諸表の作成という目的も重要です。さらに経営活動の計画や統制のために原価計算は重要なマネジメント手段としても用いられています。

つまり、原価計算は、財務会計目的だけでなく、管理会計目的にも重要な役割を果たしているのです。

原価計算の発展

原価計算は、以下の段階を経て発展してきました。

原価発見型原価計算

原価計算の歴史は、15世紀から16世紀のヘンリー7世の時代にまで溯ります。

多くの毛織物職人が農村に移動し、そこで家内工業制度を樹立した時、非ギルド企業で原価発見の努力が始められました。これが原価計算の始まりと考えられます。

18世紀から19世紀にかけて、原価計算は素価制度としてある程度の形を形成し始めます。また、この頃に簿記と原価計算との結合が試みられるようになりました。

製品原価算定志向型原価計算

産業革命後、諸産業が急速な発展を遂げると、鉄、石炭、繊維、鉄道、化学などの産業で、製品原価の算定とそれに基づく価格算定が重要な原価計算目的となりました。

19世紀終わり頃に優れた原価計算の著作が世に出、製造間接費が製造原価の一要素として認識・測定されるとともに原価算定が複式簿記と結合し、工業会計の基礎構造が成立しました。

さらに20世紀初頭には、製造間接費の配賦方法などが完成の域に近づき、予定配賦や不働時間の重要性も指摘されるようになりました。

そして、1920年頃には工業会計が確立しました。

マネジメント・コントロール志向型原価計算

第一次世界大戦が終結すると、マネジメント・コントロール志向型原価計算が注目を集めるようになりました。

戦争目的で拡大された固定的設備は戦後不況で遊休化し、企業間競争も激しくなります。このようなことから、遊休設備の有効利用、これまでの生産過程での無駄や非能率の排除が原価計算の緊急の課題となりました。

また、1920年代には、標準原価計算の重要度が高まり、損益分岐点分析も大いに関心を持たれるようになりました。

さらに生産能力が増大すると、市場関係にも重要な影響を与えるようになり、予算統制が企業に浸透していくようになりました。

1930年代に入ると、標準原価計算がほぼ完成の域に達し、直接原価計算の著作も発表され、利益管理への関心が高まり始めます。

製造原価計算準則

この頃、我が国では、商工省の臨時産業合理局に設置された財務管理委員会が、第一次世界大戦後の不況に対処する産業合理化策の一環として、昭和12年(1937年)に原価計算知識の普及と啓蒙を目的とし製造原価計算準則を制定しました。

製造原価計算準則では、原価要素の消費量および価格の管理統制、製品の売価決定の基礎、損益計算の明瞭化などを原価計算の目的としています。

製造工業原価計算要綱

昭和17年(1942年)には、我が国で製造工業原価計算要綱が制定されました。

戦時体制下において、生産力の拡充や物資需給の調整などを目的に内閣に設置された企画院が制定したもので、軍需品の調弁価格の決定や公正価格の設定を規制することを目的としていました。

戦後にその効力は失われますが、物価統制令を根拠法とする物価庁長官が指定する製品の製造を行う企業の原価計算を規制するルールとして承継されました。

経営意思決定志向型原価計算

1930年代から1940年代初頭にかけて、経営意思決定のための原価計算手法が経済学者から会計学者の手に移ると、1950年代には、特殊原価調査としてアメリカ会計学者の間で浸透していきました。

第二次世界大戦後、技術革新と生産方法の激変、製品ライフ・サイクルの短期化、技術革新のための頻回の設備投資が理由で、経営意思決定が重視されるようになりました。

この頃から、会計学者の間で現金割引率法(DCF法)が資本予算として重視されるようになり、1960年代には資本予算が経営財務だけでなく原価計算においても盛んとなり始めました。

以後も、原価計算は、コンピュータの発達もあり、様々な発展を遂げ現在にいたっています。

原価計算基準

我が国では、昭和37年(1962年)に大蔵省企業会計審議会によって原価計算基準が制定されました。

また、昭和41年(1966年)には、通産省産業構造審議会が「コスト・マネジメント」を答申し、原価計算基準が十分に説明できなかった領域が捕捉されました。

さらに昭和57年(1982年)には、社団法人企業経営協会が、経営原価計算実施要領を公表しました。こちらも、原価計算基準を補充するものですが、経営原価計算をマネジメントのための原価計算と定義し、意思決定のための原価計算と業績管理のための原価計算に代別して説明がなされています。


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