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原価計算制度

原価計算基準2では、原価計算制度を原価会計と位置付けています。

この基準において原価計算とは、制度としての原価計算をいう。原価計算制度は、財務諸表の作成、原価管理、予算統制等の異なる目的が、重点の相違はあるが相ともに達成されるべき一定の計算秩序である。かかるものとしての原価計算制度は、財務会計機構のらち外において随時的断片的に行われる原価の統計的、技術的計算ないし調査ではなくて、財務会計機構と有機的に結びつき常時継続的に行われる計算体系である。原価計算制度は、この意味で原価会計にほかならない。

原価会計は、複式簿記機構に組み込まれて行われる原価計算です。そのため、財務会計機構と有機的に結びつき常時継続的に行われる計算体系である原価計算制度は、原価会計と考えられます。

実際原価計算制度と標準原価計算制度

原価計算基準2では、原価計算制度を大別して実際原価計算制度標準原価計算制度に分類しています。

実際原価計算制度

実際原価計算制度は、製品の実際原価を計算し、これを財務会計の主要帳簿に組み入れ、製品原価の計算と財務会計とが実際原価をもって有機的に結合する原価計算制度です。原価管理上必要ある場合には、実際原価計算制度においても必要な原価の標準を勘定組織の枠外において設定し、これと実際との差異を分析し、報告することがあります。

標準原価計算制度

標準原価計算制度は、製品の標準原価を計算し、これを財務会計の主要帳簿に組み入れ、製品原価の計算と財務会計とが標準原価をもって有機的に結合する原価計算制度です。標準原価計算制度は、必要な計算段階において実際原価を計算し、これと標準との差異を分析し、報告する計算体系です。


企業が、原価計算基準にのっとって原価計算を実施する場合、実際原価計算制度または標準原価計算制度のいずれかを適用することになります。

ただし、企業によって原価計算を行う目的の重点、その他企業の個々の条件が異なるので、それらに応じて原価計算制度を適用することになります。

原価計算単位

原価計算単位は、原価単位とも呼ばれ、発生した原価を原価計算対象(給付)に関連づける一定の物量単位のことです。

例えば、1個、1ダース、1kg、1時間、1箱、1L、1mなどの度量衡単位が典型的な原価計算単位です。

原価計算単位は、製品だけでなく、サービス、活動、プロジェクトについても関連づけられます。

原価計算期間

原価計算期間は、決算期間(1年、半年、四半期)よりも短く、通常1ヶ月となります。原価計算では、原価管理の必要性も加わるので、決算期間を原価計算期間とするのは適切ではありません。

ただし、遠洋漁業や長期請負工事などでは、その活動が、数ヶ月から1年以上にわたることもあるので、原価計算期間は、その活動期間となります。プロジェクト計画では、原価計算期間はさらに長期となります。

特殊原価調査

原価計算基準2では、特殊原価調査を以下のように規定しています。

広い意味での原価の計算には、原価計算制度以外に、経営の基本計画および予算編成における選択的事項の決定に必要な特殊の原価たとえば差額原価、機会原価、付加原価等を、随時に統計的、技術的に調査測定することである。しかしかかる特殊原価調査は、制度としての原価計算の範囲外に属するものとして、この基準には含めない。

特殊原価調査は、財務会計機構のらち外で行われる原価計算であるため、原価会計(原価計算制度)ではありません。

特殊原価調査の目的は、経営意思決定です。従来品を生産し続けるか新製品の生産に切り替えるか、完成品をそのまま売るかもうひと手間かけて加工して売るか、といった意思決定に役立つ情報を提供するのが特殊原価調査です。

特殊原価調査では、統計的、技術的計算ないし調査が随時行われ、差額原価機会原価付加原価などが計算されます。