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会計上の見積りの変更の開示例

ここでは、会計上の見積りの変更を行った場合の開示について、具体例を用いて解説します。

前提条件


  1. 甲社(3月決算会社)は、当事業年度(x8年3月期)に保有するA備品の耐用年数を新たに得られた情報に基づき、従来の10年から8年に見直す会計上の見積りの変更を行いました。

  2. A備品は、x4年4月1日に8,000千円で取得したもので、残存価額をゼロとして定額法で減価償却をしています。A備品の減価償却費はすべて販売費及び一般管理費として処理しています。

  3. A備品に関する耐用年数、減価償却費の情報は以下の通りです。
    A備品に関する耐用年数の変更の影響

  4. 変更前の耐用年数は、過去の財務諸表作成時において入手可能な情報に基づき最善の見積りを行って決定したものです。

開示

A備品の変更前の耐用年数は、過去の財務諸表作成時において入手可能な情報に基づき最善の見積りを行って決定したものなので、過年度の財務諸表について修正再表示は行いません(会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準第55項)。

よって、耐用年数変更による影響は、当期以降の財務諸表に反映させます。

貸借対照表

A備品の減価償却累計額

当期首(x7年4月1日)までにA備品は3年間使用しているので、前期末(x7年3月31日)までの減価償却累計額は2,400千円です。


  • 前期末までの減価償却累計額
    =800千円×3年
    =2,400千円

当期に耐用年数を10年から8年に変更し、残存耐用年数は当期首時点で5年に短縮されています。当期首の帳簿価額5,600千円は、残存耐用年数5年、定額法で減価償却を行うので、毎期の減価償却費は1,120千円になります。


  • 毎期の減価償却費
    =5,600千円/5年
    =1,120千円

よって、当期末の減価償却累計額は、以下の計算より3,520千円になります。


  • 当期末の減価償却累計額
    =2,400千円+1,120千円
    =3,520千円

当期の貸借対照表

以上より、当期の貸借対照表は以下のようになります。

当期の貸借対照表(抜粋)

損益計算書

前期の減価償却費は800千円、当期の減価償却費は1,120千円なので、当期の損益計算書は以下のようになります。

当期の損益計算書(抜粋)

注記

本事例においては、例えば以下のように会計上の見積りの変更に関する注記をします。

当社が保有するA備品は、従来、耐用年数を10年として減価償却を行ってきましたが、当事業年度において、○○○(変更を行うこととした理由などの変更の内容を記載)により、耐用年数を8年に見直し、将来にわたり変更しております。
この変更により、従来の方法と比べて、当事業年度の減価償却費が320千円増加し、営業利益、経常利益および税引前当期純利益が同額減少しております。