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会計方針の開示の取扱い

重要な会計方針に関する情報は、財務諸表利用者が財務諸表の作成方法を理解し、財務諸表間で比較を行うために不可欠な情報であると考えられます(会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準第44-2項)。

そのため、重要な会計方針に関する注記の開示目的は、財務諸表を作成するための基礎となる事項を財務諸表利用者が理解するために、採用した会計処理の原則および手続の概要を示すことにあります(同会計基準第4-2項)。

会計基準等

会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準にいう「会計基準等」とは、次に掲げるものおよびその他の一般に公正妥当と認められる会計処理の原則および手続を明文化して定めたものをいいます(会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針第5項)。


  1. 企業会計基準委員会が公表した企業会計基準
  2. 企業会計審議会が公表した会計基準(企業会計原則等を含む。)
  3. 企業会計基準委員会が公表した企業会計基準適用指針
  4. 企業会計基準委員会が公表した実務対応報告
  5. 日本公認会計士協会が公表した会計制度委員会報告(実務指針)、監査・保証実務委員会報告および業種別監査委員会報告のうち会計処理の原則および手続を定めたもの
  6. 企業会計基準委員会が公表した移管指針

関連する会計基準等の定めが明らかでない場合

特定の会計処理の対象となる会計事象や取引(会計事象等)に対して適用し得る具体的な会計基準等の定めが存在しない場合(関連する会計基準等の定めが明らかでない場合)でも、財務諸表を作成するための基礎となる事項を財務諸表利用者が理解するために、採用した会計処理の原則および手続の概要を示さなければなりません(会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準第4-2項および第4-3項)。

関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用する会計処理の原則および手続には、例えば以下が考えられます(同会計基準第44-4項および第44-5項)。


  1. 関連する会計基準等が存在しない新たな取引や経済事象が出現した場合に適用する会計処理の原則および手続で重要性があるもの

  2. 参考となる既存の会計基準等がある場合に当該既存の会計基準等が定める会計処理の原則および手続を採用したとき

  3. 一般に公正妥当と認められる会計処理の原則および手続を明文化して定めたもの(法令等

  4. 業界の実務慣行とされている会計処理の原則および手続のみが存在する場合で当該会計処理の原則および手続に重要性があるとき

  5. 企業が所属する業界団体が当該団体に所属する各企業に対して通知する会計処理の原則および手続

重要な会計方針に関する注記

財務諸表には、重要な会計方針を注記しなければなりません(会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準第4-4項)。

会計方針の例には、以下があります(同会計基準第4-5項)。


  1. 有価証券の評価基準および評価方法
  2. 棚卸資産の評価基準および評価方法
  3. 固定資産の減価償却の方法
  4. 繰延資産の処理方法
  5. 外貨建資産および負債の本邦通貨への換算基準
  6. 引当金の計上基準
  7. 収益および費用の計上基準

なお、重要性が乏しい会計方針については、注記を省略できます(同会計基準第4-5項ただし書き)。

また、会計基準等の定めが明らかであり、当該会計基準等において代替的な会計処理の原則および手続が認められていない場合には、会計方針に関する注記を省略することができます(同会計基準第4-6項)。

会計方針の開示については、どの程度詳細に行うべきかが問題となります。これについては、注記の内容は企業によって異なるものでことから、開示の詳細さは各企業が開示目的に照らして判断すべきものと考えられます。そのため、開示の詳細さについては、特段定められていません(同会計基準第44-7項)。