財務諸表の表示方法の変更の取扱い
財務諸表の表示方法は、毎期継続して適用しなければなりません。
ただし、以下の場合には、表示方法の変更が認められます(会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準第13項)。
- 表示方法を定めた会計基準または法令等の改正により表示方法の変更を行う場合
- 会計事象等を財務諸表により適切に反映するために表示方法の変更を行う場合
表示方法を変更した場合の原則的な取扱い
財務諸表の表示方法を変更した場合には、原則として表示する過去の財務諸表について、新たな表示方法に従い財務諸表の組替えを行わなければなりません(会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準第14項)。
新たな表示方法を過去の財務諸表にも要求するのは、財務諸表全般についての比較可能性が高まり、情報の有用性がより高まるなどの効果が期待できるからです(同会計基準第52項)。
仮に前期の財務諸表は変更前の表示方法を採用し、当期の財務諸表は変更後の表示方法を採用した場合、前期と当期で表示が異なることから、財務諸表利用者が期間比較を行うのが難しくなります。
原則的な取扱いが実務上不可能な場合の取扱い
表示する過去の財務諸表のうち、表示方法の変更に関する原則的な取扱いが実務上不可能な場合には、財務諸表の組替えが実行可能な最も古い期間から新たな表示方法を適用します(会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準第15項)。
財務諸表の組替えが実務上不可能な場合とは、会計方針の遡及適用が実務上不可能な状況が該当します(同会計基準第8項)。
表示方法の変更に関する注記
表示方法の変更を行った場合には、以下の事項を注記します(会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準第16項)。
- 財務諸表の組替えの内容
- 財務諸表の組替えを行った理由
- 組替えられた過去の財務諸表の主な項目の金額
- 原則的な取扱いが実務上不可能な場合には、その理由
なお、上記の「2」「3」「4」については、連結財務諸表における注記と個別財務諸表における注記が同一である場合には、個別財務諸表において、その旨の記載をもって代えることができます(同会計基準第16項ただし書き)。
表示方法の変更の具体例
ここでは、財務諸表の表示方法の変更について具体例を示します。
前提条件
- 甲社(3月決算会社)は、当事業年度(x4年3月期)より、従来、貸借対照表の流動資産の「その他」に含めていた前払費用の金額的重要性が増したため、これを独立掲記する表示方法の変更を行いました。
- 前事業年度(x3年3月期)の貸借対照表の「その他」には「前払費用」2,000千円が含まれていました。なお、甲社の前事業年度の貸借対照表は以下の通りです。
- キャッシュ・フロー計算書への影響は考慮しません。
貸借対照表の組換え
当事業年度(x4年3月期)より、前払費用の重要性が高まったため、前事業年度(x3年3月期)の流動資産の「その他」3,000千円に含まれていた「前払費用」2,000千円を独立掲記し、「その他」を1,000千円に修正します。
これらの表示方法の変更を行った後の当事業年度の貸借対照表は以下のようになります。
注記
表示方法の変更に関する注記は、例えば、以下のようになります。
従来、「流動資産」の「その他」に含めておりました「前払費用」は、金額的重要性が増したため、当事業度より独立掲記しております。この表示方法の変更を反映させるため、前事業年度の財務諸表の組替えを行っております。
この結果、前事業年度の貸借対照表において、「流動資産」の「その他」に表示していた3,000千円は、「前払費用」2,000千円、「その他」1,000千円として組み替えております。