資産除去債務が複数の有形固定資産から構成される場合の会計処理の具体例
ここでは、資産除去債務が複数の有形固定資産から構成される場合の会計処理について、具体例を用いて解説します。
前提条件
- 甲社(3月決算会社)は、x1年4月1日にA機械設備を5,000千円、B機械設備を1,000千円で取得し、A機械設備を主たる資産とし一体で使用を開始しました。耐用年数は、A機械設備が4年、B機械設備が2年です。
- A機械設備は、使用後に除去する法的義務がありますが、B機械設備のみの除去については法的義務はありません。A機械設備を除去する際には、同時にB機械設備も除去されます。なお、除去に必要な支出は、A機械設備が300千円、B機械設備が200千円と見積もっています。
- 資産除去債務は取得時に発生し、割引率は2%と見積もっています。年利2%、期間4年の複利現価係数は、0.9238です。また、年利2%、期間2年の複利現価係数は、0.9612です。
- 機械設備は、残存価額0で定額法により減価償却を行っています。
- x3年3月31日にB機械設備を除去し、新たに1,000千円でB機械設備を取得しました。なお、除去にかかった支出は200千円です。
- x5年3月31日にA機械設備とB機械設備を除去しました。なお、除去にかかった支出はA機械設備が300千円、B機械設備が200千円です。
会計処理
資産除去債務の計算
A機械設備を主たる資産とし、B機械設備と一体で使用を開始しています。B機械設備には除去について法的義務がないので、資産除去債務を一括で見積り、対応する除去費用を主たる資産であるA機械設備の帳簿価額に加えます(資産除去債務に関する会計基準の適用指針第6項)。
機械設備を除去する際の将来キャッシュ・フロー見積額は、A機械設備が300千円、B機械設備が200千円なので、合計500千円を割引率2%で割り引き、x1年4月1日に計上する資産除去債務462千円を計算します。
- 資産除去債務計上額
=(300千円+200千円)/(1+0.02)⁴
=462千円
年利2%、期間4年の複利現価係数が0.9238なので、これを将来キャッシュ・フロー見積額に乗じて、462千円と計算することもできます。
- 資産除去債務計上額
=(300千円200千円)×0.9238
=462千円
x1年4月1日
A機械設備の取得と資産除去債務の計上
A機械設備の取得価額5,000千円に資産除去債務に対応する除去費用462千円を加算した5,462千円をA機械設備の帳簿価額とします。
B機械設備の取得
B機械設備は、取得価額1,000千円を帳簿価額とします。
x2年3月31日
利息費用の計上
x1年4月1日に計上した資産除去債務462千円に割引率2%を乗じて、時の経過による増加額(利息費用)9千円を資産除去債務に加算します。
- 時の経過による資産除去債務の増加額
=462千円×2%
=9千円
A機械設備の減価償却費の計上
A機械設備につき、期間4年、残存価額0、定額法で減価償却を行います。
- 減価償却費
=5,462千円/4年
=1,366千円
B機械設備の減価償却費の計上
B機械設備につき、期間2年、残存価額0、定額法で減価償却を行います。
- 減価償却費
=1,000千円/2年
=500千円
x3年3月31日
利息費用の計上
x1年4月1日に計上した資産除去債務462千円とx2年3月31日に計上した利息費用9千円の合計額471千円に割引率2%を乗じて、時の経過による増加額(利息費用)9千円を資産除去債務に加算します。
- 時の経過による資産除去債務の増加額
=(462千円+9千円)×2%
=9千円
A機械設備の減価償却費の計上
A機械設備につき、期間4年、残存価額0、定額法で減価償却を行います。
- 減価償却費
=5,462千円/4年
=1,366千円
B機械設備の減価償却費の計上
B機械設備につき、期間2年、残存価額0、定額法で減価償却を行います。
- 減価償却費
=1,000千円/2年
=500千円
B機械設備の除去
B機械設備を除去し、200千円の除去費用が発生したので、固定資産除却損を計上します。
B機械設備の再取得
B機械設備を新たに1,000千円で取得したので資産計上します。
x4年3月31日
利息費用の計上
x1年4月1日に計上した資産除去債務462千円、x2年3月31日に計上した利息費用9千円、x3年3月31日に計上した利息費用9千円の合計額480千円に割引率2%を乗じて、時の経過による増加額(利息費用)10千円を資産除去債務に加算します。
- 時の経過による資産除去債務の増加額
=(462千円+9千円+9千円)×2%
=10千円
A機械設備の減価償却費の計上
A機械設備につき、期間4年、残存価額0、定額法で減価償却を行います。
- 減価償却費
=5,462千円/4年
=1,366千円
B機械設備の減価償却費の計上
B機械設備につき、期間2年、残存価額0、定額法で減価償却を行います。
- 減価償却費
=1,000千円/2年
=500千円
x5年3月31日
利息費用の計上
x1年4月1日に計上した資産除去債務462千円、x2年3月31日に計上した利息費用9千円、x3年3月31日に計上した利息費用9千円、x3年3月31日に計上した利息費用10千円の合計額490千円に割引率2%を乗じて、時の経過による増加額(利息費用)10千円を資産除去債務に加算します。
- 時の経過による資産除去債務の増加額
=(462千円+9千円+9千円+10千円)×2%
=10千円
A機械設備の減価償却費の計上
A機械設備につき、期間4年、残存価額0、定額法で減価償却を行います。
- 減価償却費
=5,462千円-1,366千円×3年
=1,364千円
B機械設備の減価償却費の計上
B機械設備につき、期間2年、残存価額0、定額法で減価償却を行います。
- 減価償却費
=1,000千円/2年
=500千円
A機械設備の除去と資産除去債務の履行
A機械設備の除去に際して、B機械設備も一緒に除去されます。