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資産除去債務の会計処理

資産除去債務は、有形固定資産の取得、建設、開発または通常の使用によって発生した時に負債として計上します(資産除去債務に関する会計基準第4項)。

また、資産除去債務に対応する除去費用は、資産除去債務を負債として計上した時に、当該負債の計上額と同額を、関連する有形固定資産の帳簿価額に加えます(同会計基準7項)。

資産除去債務に対応する除去費用の費用配分

資産計上された資産除去債務に対応する除去費用は、減価償却を通じて、当該有形固定資産の残存耐用年数にわたり、各期に費用配分されます。

時の経過による資産除去債務の調整額の処理

時の経過による資産除去債務の調整額は、その発生時の費用として処理します。当該調整額は、期首の負債の帳簿価額に当初負債計上時の割引率を乗じて算定します(資産除去債務に関する会計基準第9項)。



資産除去債務が使用の都度発生する場合

資産除去債務が有形固定資産の稼働等にしたがって、使用の都度発生する場合には、資産除去債務に対応する除去費用を各期においてそれぞれ資産計上し、関連する有形固定資産の残存耐用年数にわたり、各期に費用配分します(資産除去債務に関する会計基準第8項)。

上記の処理以外にも、除去費用をいったん資産に計上し、当該計上時期と同一の期間に、資産計上額と同一の金額を費用処理することもできます。



資産除去債務が複数の有形固定資産から構成される場合

資産除去債務の対象が複数の有形固定資産から構成され、そのうち一部の資産については全体の除去以前により短い周期で除去され、再び取得される場合があります。

この場合には、当該資産について、より短い周期での除去に係る法律上の義務およびそれに準ずるものはないものの、除去に係る法律上の義務等を有し資産除去債務の対象となる主たる資産があることから、主たる資産の除去に伴い当該構成資産が同時に除去されるものとみて、複数の有形固定資産の資産除去債務を一括して見積り、対応する除去費用を主たる資産の帳簿価額に加えます(資産除去債務に関する会計基準の適用指針第6項)。

なお、個々の資産が除去に係る法的義務等を有するときには、当該複数の有形固定資産に対し、一括して資産除去債務を見積るのではなく、個々の有形固定資産について見積り、対応する除去費用を個々の有形固定資産の帳簿価額に加えなければなりません(同適用指針第25項)。



特別の法令等により除去に係る費用を適切に計上する方法がある場合

特別の法令等により、有形固定資産の除去に係るサービス(除去サービス)の費用を当該有形固定資産の使用に応じて各期間で適切に費用計上する方法がある場合には、当該費用計上方法を用いることができます(資産除去債務に関する会計基準の適用指針第8項)。

この場合でも、当該有形固定資産の資産除去債務を負債に計上し、これに対応する除去費用を関連する有形固定資産の帳簿価額に加える方法で資産計上する必要があります。

また、当該費用計上方法については、注記しなければなりません。

建物等賃借契約に関連して敷金を支出している場合

建物等の賃借契約において、当該賃借建物等に係る有形固定資産(内部造作等)の除去などの原状回復が契約で要求されていることから、当該有形固定資産に関連する資産除去債務を計上しなければならない場合があります。

このような場合には、当該賃借契約に関連する敷金が資産計上されているときは、当該計上額に関連する部分について、当該資産除去債務の負債計上およびこれに対応する除去費用の資産計上に代えて、当該敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのうち当期の負担に属する金額を費用計上することができます(資産除去債務に関する会計基準の適用指針第9項)。

当該処理方法を採用する場合、当期の負担に属する金額は、同種の賃借建物等への平均的な入居期間など合理的な償却期間に基づいて算定することが適当と考えられます(同適用指針第27項)。



資産除去債務の見積りの変更

割引前将来キャッシュ・フローの見積りの変更

割引前の将来キャッシュ・フローに重要な見積りの変更が生じた場合の当該見積りの変更による調整額は、資産除去債務の帳簿価額および関連する有形固定資産の帳簿価額に加減して処理します(資産除去債務に関する会計基準第10項)。

資産除去債務が法令の改正等により新たに発生した場合も、見積りの変更と同様に扱います。

割引前将来キャッシュ・フローの見積りの変更による調整額に適用する割引率

割引前の将来キャッシュ・フローに重要な見積りの変更が生じた場合には、以下の割引率を適用します(資産除去債務に関する会計基準第11項)。


  1. 当該キャッシュ・フローが増加する場合は、その時点の割引率を適用
  2. 当該キャッシュ・フローが減少する場合は、負債計上時の割引率を適用
  3. 過去に割引前の将来キャッシュ・フローの見積りが増加した場合で、減少部分に適用すべき割引率を特定できないときは、加重平均した割引率を適用


資産除去債務を合理的に見積ることができない場合

資産除去債務の発生時に、当該債務の金額を合理的に見積ることができない場合には、資産除去債務を計上せず、当該債務額を合理的に見積ることができるようになった時点で負債として計上します(資産除去債務に関する会計基準第5項)。

この場合、負債の計上の処理は、資産除去債務の見積りの変更に準じます。