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資産除去債務の開示

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貸借対照表上の表示

資産除去債務は、固定負債の区分に資産除去債務等の適切な科目名で表示します。貸借対照表日後1年以内に資産除去債務の履行が見込まれる場合には、流動負債の区分に表示します(資産除去債務に関する会計基準第12項)。

損益計算書上の表示

資産除去債務に対応する除去費用にかかる費用配分額

資産計上された資産除去債務に対応する除去費用にかかる費用配分額は、損益計算書上、当該資産除去債務に関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分に含めて計上します(資産除去債務に関する会計基準第13項)。

すなわち、資産除去債務に関連する有形固定資産の減価償却費が、販売費および一般管理費に計上されている場合は、除去費用にかかる費用配分額も販売費および一般管理費に計上されます。また、資産除去債務に関連する有形固定資産の減価償却費が、売上原価に計上されている場合は、除去費用にかかる費用配分額も売上原価に計上されます。

時の経過による資産除去債務の調整額

時の経過による資産除去債務の調整額(利息費用)は、損益計算書上、当該資産除去債務に関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分に含めて計上します(資産除去債務に関する会計基準第14項)。

時の経過による資産除去債務の調整額は、資産除去債務の履行に関する資金調達費用と見ることができるので、財務費用として営業外費用に含めるべきとの見方があります(同会計基準54項)。

しかし、時の経過による資産除去債務の調整額は、実際の資金調達活動による費用ではないこと、退職給付会計における利息費用が退職給付費用の一部を構成していることから、資産除去債務にかかる費用は、有形固定資産の減価償却費と同じ区分に含めて計上するのが適切とされました(同会計基準55項)。

資産除去債務の履行時に認識される差額

資産除去債務の履行時に認識される資産除去債務残高と資産除去債務の決済のために実際に支払われた額との差額(履行差額)は、損益計算書上、原則として、当該資産除去債務に対応する除去費用にかかる費用配分額と同じ区分に含めて計上します(資産除去債務に関する会計基準第15項)。

ただし、当初の除去予定時期よりも著しく早期に除去することとなった場合等、履行差額が異常な原因により生じた場合には、特別損益として処理しなければなりません(同会計基準第58項)。

注記事項

資産除去債務の会計処理に関連して、重要性が乏しい場合を除き、次の事項を注記しなければなりません(資産除去債務に関する会計基準第16項)。


  1. 資産除去債務の内容についての簡潔な説明
  2. 支出発生までの見込期間、適用した割引率等の前提条件
  3. 資産除去債務の総額の期中における増減内容
  4. 資産除去債務の見積りを変更したときは、その変更の概要および影響額
  5. 資産除去債務は発生しているが、その債務を合理的に見積ることができないため、貸借対照表に資産除去債務を計上していない場合には、当該資産除去債務の概要、合理的に見積ることができない旨およびその理由

上記の他に特別の法令等により、有形固定資産の除去に係るサービス(除去サービス)の費用を当該有形固定資産の使用に応じて各期間で適切に費用計上する方法があり、当該費用計上方法を適用している場合には、注記する必要があります(資産除去債務に関する会計基準の適用指針第8項)。

資産除去債務の内容についての簡潔な説明

資産除去債務の内容についての簡潔な説明においては、資産除去債務の発生原因となっている法的規制または契約等の概要(法令等の条項および契約条件等)を簡潔に記載します(資産除去債務に関する会計基準の適用指針第10項)。

なお、多数の有形固定資産について資産除去債務が生じている場合には、有形固定資産の種類や場所等について、資産除去債務に関する会計基準第16項で求められている注記をまとめて記載することができます。

資産除去債務を合理的に見積ることができない場合の注記

資産除去債務を合理的に見積ることができない場合には、その旨およびその理由を注記しなければなりませんが、その際には、資産除去債務の内容についての簡潔な説明と関連付けて記載する必要があります(資産除去債務に関する会計基準の適用指針第11項)。

資産除去債務のキャッシュ・フロー計算書上の取扱い

キャッシュ・フロー計算書においては、資産除去債務を実際に履行した場合、その支出額についてキャッシュ・フロー計算書上「投資活動によるキャッシュ・フロー」の項目として扱います(資産除去債務に関する会計基準の適用指針第12項)。

重要な資産除去債務を計上したときは、キャッシュ・フロー計算書に「重要な非資金取引」として注記をします(同適用指針第13項)。