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退職給付会計

「退職給付に関する会計基準」では、その適用範囲について以下のように記述されています。

本会計基準は、一定の期間にわたり労働を提供したこと等の事由に基づいて、退職以後に支給される給付(退職給付)の会計処理に適用する。
ただし、株主総会の決議又は委員会設置会社における報酬委員会の決定が必要となる、取締役、会計参与、監査役及び執行役(以下合わせて「役員」という。)の退職慰労金については、本会計基準の適用範囲には含めない。

退職給付とは

退職給付とは、一定の期間にわたり労働を提供したこと等の事由に基づいて、退職以後に支給される給付の総称のことです。退職一時金や企業年金等がその代表例です。

退職給付は、企業が従業員の在職中の功績に報いる報償的な側面や老後の生活保障的な側面を有していますが、その基本的な性格は、賃金の後払いと考えられます。

そのため、会計上は発生主義の立場から、退職一時金や年金として支給されるときに費用を認識するのではなく、従業員の在籍中にその労働に応じて費用を認識するのが妥当です。

確定拠出制度と確定給付制度

退職給付の制度には、確定拠出制度確定給付制度があります。

確定拠出制度とは、一定の掛金を外部に積み立て、事業主である企業が、当該掛金以外に退職給付に係る追加的な拠出義務を負わない退職給付制度のことです。確定拠出制度の特徴は、事業主である企業は、拠出した掛金以上に従業員の退職給付に対する負担がないという点にあります。

例えば、ある従業員の退職給付のために毎月1万円の掛金を年金を運用している基金に支払いさえすれば、以後、追加の拠出が発生しません。運用がうまく行かずに元本が目減りしたとしても事業主は、その穴埋めのために追加で掛金を拠出する必要はありません。

一方の確定給付制度とは、確定拠出制度以外の退職給付制度のことです。将来の従業員に対する給付が、最初から決まっているという点が制度の特徴です。

例えば、従業員に対する老後の退職給付が毎月10万円と決まっていたとします。もしも、年金の運用がうまく行かずに毎月9万円しか年金を支給できない状況となった場合、事業主が1万円を穴埋めして従業員には10万円が支給されます。

企業会計上は、確定拠出制度の場合は掛金拠出時に退職給付費用を認識するのでそれほど大きな論点はありません。しかし、確定給付制度は、掛金拠出後でも年金の運用次第で追加の拠出が発生する場合があり、また、拠出と給付との間に時間的なズレがあることから将来給付額の予測が必要になるなど、多くの論点があります。