確定給付制度における勤務費用と利息費用の計算
退職給付債務は、退職給付のうち、認識時点までに発生していると認められる部分を割り引いたものです。
ある従業員が1年間働いた場合、期首時点の退職給付債務は、その期間の勤務に応じて増加します。また、期首時点の退職給付債務は、その計算に用いる割引率に応じて、期末に利息相当額が上乗せされます。
1期間の労働の対価として発生したと認められる退職給付を勤務費用といいます。また、割引計算により算定された期首時点における退職給付債務について、期末までの時の経過により発生する計算上の利息のことを利息費用といいます。
勤務費用の計算
勤務費用は、退職給付見込額のうち当期に発生したと認められる額を割り引いて計算します。
「退職給付に関する会計基準の適用指針 第15項」では、当期の勤務費用は、退職給付債務の計算に準じて、期首時点で以下のようにして計算する旨が記述されています。
- 退職給付見込額の見積り
- 退職給付見込額のうち当期において発生すると認められる額の計算
- 勤務費用の計算
1.退職給付見込額の見積り
退職給付見込額は、退職給付債務の計算において見積もった額と同じです。もう一度、勤続30年、年齢56歳の山田一郎さんの退職一時金制度でのx1年4月1日(期首)時点の退職給付見込額を計算した表を以下に示します。
2.退職給付見込額の当期発生額の計算
退職給付見込額のうち当期において発生すると認められる額は、退職給付債務の計算において用いた方法と同一の方法により、当期分について計算します。
山田一郎さんの当期(x1年4月1日~x2年3月31日)に発生すると認められる退職給付見込額の計算は、以下の表のようになります。
- 予想退職時期の年齢ごとに退職給付見込額を退職時の勤続年数で除して、当期の勤続年数(1年)を乗じます。
- 「1」で計算した金額が、山田一郎さんの予想退職時期の年齢ごとに計算された退職給付見込額のうち当期(x1年4月1日~x2年3月31日)において発生すると認められる額です。
勤務費用の計算
予想退職時期ごとの退職給付見込額のうち当期に発生すると認められる額を割引率を用いて割り引きます。そして、当該割引額を合計して勤務費用を計算します。
山田一郎さんのデータをもとに当期の勤務費用を計算すると以下の表のようになります。なお、割引係数の欄は割引率を5%として計算したものです
- 予想退職時期の年齢ごとに当期に発生すると認められる額に割引係数を乗じて、割引計算された金額を算定します。
- 各予想退職時期の年齢の割引計算された金額を合計したものが、当期の山田一郎さんの勤務費用になります。
利息費用の計算
利息費用とは、割引計算により算定された期首時点における退職給付債務について、期末までの時の経過により発生する計算上の利息のことです。
計算例
山田一郎さんの期首時点の退職給付債務が18,945であり、割引率が5.00%だった場合、当期の利息費用は、以下のように計算されます。
利息費用=18,945×5.00%=947
なお、利息費用は、期首の退職給付債務に割引率を乗じて計算するのが原則ですが、期中に退職給付債務の重要な変動があった場合には、これを反映させる必要があります。
割引率の決定
退職給付債務等の計算における割引率は、リスクフリーレートを基礎として決定します。
また、割引率は、退職給付支払ごとの支払見込期間を反映するものでなければなりません。「退職給付に関する会計基準の適用指針 第24項」では、採用する割引率について、退職給付の支払見込期間ごとの金額を反映した単一の加重平均割引率や退職給付の支払見込期間ごとに設定された複数の割引率が例示されています。
割引率は、各事業年度において再検討する必要があります。その結果、割引率の変動が退職給付債務に重要な影響を及ぼすと判断した場合にはこれを見直し、退職給付債務の再計算が必要となります。