確定給付企業年金制度2年目の会計処理
ここでは、確定給付企業年金制度の1年目の会計処理に続いて、2年目の会計処理を具体的な数値を用いて解説します。なお、計算の前提は以下の通りで、1年目から変わっていません。
- B社は従業員拠出制の確定給付企業年金制度を採用している。
- 数理計算上の差異は発生年度の翌期から定額法（5年）で費用処理する。
- 過去勤務費用は発生年度別に10年間にわたり定額法で費用処理する。
- 税効果については、その他の包括利益（退職給付に係る調整額）に関連するものだけを示す。法定実効税率は40%、繰延税金資産の回収可能性は常にあるものとする。
- ワークシート上で用いる記号は次の通りである。
S=勤務費用、I=利息費用、R=期待運用収益
PSC=過去勤務費用の発生額、AGL=数理計算上の差異の発生額
A=過去勤務費用及び数理計算上の差異の費用処理額
P=年金または退職金支払額、C=事業主による掛金拠出部分
EC=従業員による掛金拠出部分
x2年度の会計処理
B社のx2年度の確定給付企業年金制度に関する内容は以下の通りです。
- 期首時点（x2年4月1日）の退職給付債務は2,130、年金資産は1,400。
- 当期の勤務費用は120、利息費用は85（割引率は4.0%）であった。
- 当期の期待運用収益は70（長期期待運用収益率5.0%）と計算された。
- 当期の年金給付支払額は70、掛金拠出額は100であった。
- 掛金拠出額のうち20は従業員からの拠出である。
- x2年4月1日時点で給付水準の引下げを行い、過去勤務費用200（貸方差異）が発生した。
- 期末（x3年3月31日）の退職給付債務は2,700と計算され、年金資産の時価は1,500であった。
x2年度のB社の確定給付企業年金制度に関するワークシートを期末の予測まで作成すると以下のようになります。
- 「退職給付費用及び過去勤務費用の発生」の「S」には、勤務費用120が入ります。
- 「退職給付費用及び過去勤務費用の発生」の「I」には、期首退職給付債務に割引率を乗じた利息費用85が入ります。
利息費用=2,130×4.0% - 「退職給付費用及び過去勤務費用の発生」の「R」には、期首年金資産に長期期待運用収益率を乗じた期待運用収益70が入ります。
期待運用収益=1,400×5.0% - 「退職給付費用及び過去勤務費用の発生」のx1年度分の数理計算上の差異の費用処理額「A」は、5年の定額法で計算した20となります。
x1年度分の数理計算上の差異の費用処理額=100/5年=20 - 「退職給付費用及び過去勤務費用の発生」の「PSC」には、x2年4月1日に給付水準を引き下げたことで発生した過去勤務費用200のうち期末残高180が入ります。また、「A」には過去勤務費用の当期費用処理額20が入ります。
過去勤務費用の費用処理額=200/10年=20 - 「年金/掛金支払額」の「P」には、当期の年金給付支払額70が入ります。退職給付債務と年金資産は、年金給付支払額70だけ減少します。
- 「年金/掛金支払額」の「C」には、掛金拠出額100のうち従業員負担分20を差引いた事業主負担分80が入ります。
事業主の掛金拠出部分=100-20=80 - 「年金/掛金支払額」の「EC」には、掛金拠出額のうち従業員負担分の20が入ります。また、同額だけB社の退職給付債務が減少するので、「S」にも20が入ります。
- 退職給付債務の「期末予測」には、期首退職給付債務に「退職給付費用及び過去勤務費用の発生」と「年金/掛金支払額」を加減算した金額2,065が入ります。また、年金資産の「期末予測」には、期首年金資産に「退職給付費用及び過去勤務費用の発生」と「年金/掛金支払額」を加減算した金額1,500が入ります。
x2年度末の「期末予測」から「期末実際」までのワークシートは以下のようになります。
- 退職給付債務の「期末実際」には、期末に計算された退職給付債務2,100が入ります。また、年金資産の「期末実際」には、期末の年金資産の時価1,500が入ります。
- 「数理計算上の差異」の「AGL」には、退職給付債務の期末予測と期末実際との差として計算された35が入ります。
x2年度の仕訳
B社のx2年度の退職給付に関する全仕訳を示すと以下のようになります。
