確定給付制度における過去勤務費用の会計処理
「退職給付に関する会計基準 第12項」では、過去勤務費用について以下のように規定しています。
「過去勤務費用」とは、退職給付水準の改訂等に起因して発生した退職給付債務の増加又は減少部分をいう。なお、このうち当期純利益を構成する項目として費用処理されていないものを「未認識過去勤務費用」という
過去勤務費用が発生する理由
過去勤務費用は、退職一時金規定の改定等で、退職給付水準の改訂等が行われた時に退職給付債務が増減することが原因で発生します。すなわち、過去勤務費用は、給付水準の改定前の退職給付債務と改定後の退職給付債務の改訂時点における差額を意味します。
例えば、ある従業員のx1年3月31日時点の退職給付債務が100だったとします。同日に退職金規定が改訂され給付水準が上がったことから、当該従業員の退職金規定改定後の退職給付債務が110に変わった場合、差額10が過去勤務費用となります。
なお、毎月支給される給与の基本給部分を底上げするベースアップが行われたことによる退職給付債務の変動は、過去勤務費用に該当しません。
また、「退職給付に関する会計基準 第12項」に「退職給付水準の改訂等」と記載されていますが、この「等」は、初めて退職給付制度を導入した場合で、給付計算対象が現存する従業員の過年度の勤務期間にも及ぶときが含まれると考えられています。
過去勤務費用の費用処理
過去勤務費用の費用処理は、数理計算上の差異の費用処理に準じて行われます。
すなわち、平均残存勤務期間以内の一定の年数で、定額法又は定率法で費用処理します。ただし、過去勤務費用は、退職金規定等の改定によって発生するものであり、頻繁に発生することがないので、発生年度別に定額法で費用処理するのが望ましいと言えます。
また、過去勤務費用と数理計算上の差異は、発生原因や発生頻度が異なるので、費用処理年数は別個に設定することができます。
なお、過去勤務費用の費用処理の計算例については、数理計算上の差異の費用処理を参考にしてください。