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厚生年金基金の代行返上の会計処理

厚生年金基金制度は、厚生年金基金という特別法人が事業主と従業員等との間に介在し、国の厚生年金の一部を代行するとともに企業独自の退職金制度を上乗せすることによって、より手厚い退職給付を行うことを目的とした制度です。

厚生年金基金制度を確定給付企業年金制度へ移行し、厚生年金基金制度の代行部分を返上することがあります。この場合、代行部分に係る退職給付債務は、当該返還の日にその消滅を認識しなければなりません。

なお、厚生年金基金制度の代行部分の返上については、将来分返上認可、過去分返上認可及び返還に関して、それぞれ会計処理が必要となります。

将来分返上認可を受けた場合

将来分返上認可を受けた場合は、以下の手順で会計処理をします。

  1. 認可の直前の代行部分に係る退職給付債務と将来分支給免除を反映した退職給付債務との差額を、代行部分に係る過去勤務費用として認識する。
  2. 将来分返上認可の日以後は、将来分支給義務免除を反映した退職給付債務の金額に基づき退職給付費用を算定する。
  3. 代行返上で認識した過去勤務費用を企業が採用する方法及び期間で費用処理する。

過去分返上認可を受けた場合

過去分返上認可を受けた場合は、以下の手順で会計処理をします。

  1. 過去分返上認可の直前の代行部分に係る退職給付債務を国への返還相当額(最低責任準備金)まで修正し、その差額を損益に計上する。
  2. 未認識過去勤務費用、未認識数理計算上の差異、会計基準変更時差異の未処理額のそれぞれの残高のうち、過去分返上認可の日における代行部分に対応する金額を退職給付に占める代行部分の比率その他合理的な方法により算定し、損益に計上する。
  3. 返還の日において、過去分返上認可により修正された退職給付債務と実際返還額との間に差額が生じた場合には、原則として、当該差額を損益に計上する。

会計基準変更時差異とは、旧「退職給付に係る会計基準」の適用初年度の期首における未積立退職給付債務と従来採用していた基準により引当てられた退職給与引当金等との差額のことです。旧「退職給付に係る会計基準」では、15年以内の一定の年数にわたり費用処理することが定められていました。