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スケジューリング不能な一時差異の取扱い

繰延税金資産の回収可能性の検討にあたっては、当期末に存在する将来減算一時差異及び将来加算一時差異が、いつ、どれだけ解消するのかを見積もる必要があります。これをスケジューリングといいます。

例えば、税法で定められている耐用年数が5年の有形固定資産を保有していたとします。この有形固定資産の減価償却を会計上は、耐用年数3年で行っていた場合、税務上よりも3年早く取得原価が費用化されます。この3年間の税務上と会計上の減価償却費の差が、将来減算一時差異となりますが、最終的に税務上の耐用年数5年が経過した段階で、当該一時差異が解消されることは、あらかじめわかっています。したがって、この場合の将来減算一時差異は、スケジューリングが可能といえます。

しかし、すべての一時差異が上記のようにあらかじめ解消時期と解消額がわかっているわけではありません。例えば、会計上、期末に保有している債権に貸倒引当金を設定したものの税務上は損金算入できなかったとします。この場合、貸付先の倒産という事実が発生したら税務上損金算入することができますが、貸倒引当金を設定した時には、いつ倒産し、どれだけの債権が貸倒として確定するのかわかりません。こういった解消時期や金額をあらかじめ予測することができない一時差異のことをスケジューリング不能な一時差異といいます。

スケジューリング不能な一時差異に係る繰延税金資産

スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産については、発生した時に回収可能性の判断をすることができません。そのため、スケジューリング不能な一時差異に係る繰延税金資産については、税務上の損金算入時期が明確となった時点で回収可能性の判断に基づき繰延税金資産を計上することになります。

その他有価証券の評価差額の取扱い

売却を予定していないその他有価証券の評価差額から生じる一時差異は、解消時期が不明なため、スケジューリング不能な一時差異に該当します。

そのため評価差損が発生している銘柄については、スケジューリングが可能となった時に将来減算一時差異については回収可能性の検討をしたうえで、繰延税金資産を計上することになります。また、評価差益が発生してる銘柄については、将来加算一時差異について繰延税金負債を計上します。

しかし、その他有価証券は個々の保有目的等に応じてその性格を細分化するものではないので、その他有価証券の評価差額のうち、スケジューリングが不能なものについては、評価差益と評価差損とに区分せず、各合計金額を相殺した後の純額が評価差益なら繰延税金負債を、評価差損なら繰延税金資産を計上する方法も認められます。

なお、その他有価証券の評価差額について純額で繰延税金資産又は繰延税金負債を認識した場合については、「その他有価証券の評価差額及び固定資産の減損損失に係る税効果会計の適用における監査上の取扱い」で、実務上の取扱いが記述されています。

要約すると、純額で評価差益の場合には、評価差額以外の将来減算一時差異との相殺はできないものとして取り扱われ、純額で評価差損の場合には、スケジューリング不能な一時差異なので、原則として繰延税金資産の回収可能性はないもとして取り扱われます。ただし、純額で評価差損の場合でも、会社の過去の業績が良好な場合や将来の一時差異の解消額の見積りの予測から、回収可能性があるものと判断し、繰延税金資産の計上が認められる場合があります。