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重要性の原則

企業会計原則の一般原則ではありませんが、それに準ずる原則として重要性の原則が、企業会計原則注解(注1)に記述されています。

企業会計は、定められた会計処理の方法に従って正確な計算を行うべきものであるが、企業会計が目的とするところは、企業の財務内容を明らかにし、企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにあるから、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないで他の簡便な方法によることも、正規の簿記の原則に従った処理として認められる。

重要性の原則は、一般原則では正規の簿記の原則及び明瞭性の原則と関係があります。

正規の簿記の原則との関係

本来、企業会計では、会計事実について、1円単位まできっちりと記帳を行い、報告しなければなりません。しかし、あまりに金額的にも項目的にも重要性の乏しい取引についてまで、厳密な会計処理を要求したのでは、手間ばかりがかかって得るものが少ないといったことがあります。

そこで、重要性の原則では、金額的に重要性がないものや項目的(質的)に重要性がないものについては、本来の会計処理によらず、簡略化した会計処理を行うことを認めているのです。

例えば、業務用として消しゴムを購入したとします。この場合、正規の簿記の原則に則って、厳密に会計処理を適用すると、購入時は資産に計上します。そして、消しゴムを使用するたびにすり減った部分を計測して費用を計上し、未使用部分だけを資産として残します。

しかし、企業にとって消しゴムの購入代金はあまりに僅少であり、わざわざ使うたびにすり減った部分を計測していたのでは、他の業務に支障をきたすだけで、得られる便益よりも失う時間と手間の方が多くなってしまいます。そこで、このような場合には、重要性の原則を適用し、消しゴムを購入した時に費用として計上する簡便な会計処理の選択適用が許されるのです。

逆にどんなに金額的に僅少であっても、項目的には簡便な会計処理が許されないものもあります。

現金や預金などの項目は、盗難の危険性が高かったり、仕入先への代金の支払いや銀行への借入金の返済など企業活動にとって重要性が高いため、これらについては簡便な会計処理が許されず、わずかな金額であったとしても厳格な会計処理が要求されます。

明瞭性の原則との関係

明瞭性の原則では、利害関係者の判断を誤らせないようにするため、企業の財政状態及び経営成績を明瞭に表示することを要請しています。

しかし、財務諸表に細かい項目まで表示したのではかえって利害関係者の判断を誤らせる可能性があるので、重要性の原則により、簡略化した表示を行うことが認められています。

例えば、分割返済の定めがある借金については、1年以内に返済する予定の部分と1年を超えて返済する予定の部分を分けて表示するのが厳格な表示方法ですが、金額的に重要性が乏しい場合には、両者を分けずに表示することができます。

上記とは反対に重要性があると判断された項目は、たとえ金額的に僅少であったとしても、独立して表示する必要があります。

例えば、親会社や子会社との間で発生した貸付金や借入金については、その内容が重要であるため、他の項目とは分けて表示することが要求されます。


なお、重要性の判断は、一律に決まっているわけではありません。大企業では、100万円は重要性が乏しいとして簡便な会計処理や表示が認められても、小さな企業では金額的に重要と判断され厳格な会計処理と表示が要求されることがあります。