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会計公準

会計公準とは、企業会計における基礎的な前提条件のことです。わかりやすくいうと、企業会計における憲法ということになります。会計公準には、様々なものがありますが、その中でも企業実体の公準、継続企業の公準、貨幣的測定の公準がもっとも一般的です。

企業実体の公準

企業実体の公準は、企業の所有者と企業を分離して考えるということです。

例えば、八百屋を営んでいたとしましょう。八百屋に並んでいる白菜、ニンジン、ピーマン、シイタケといった野菜を販売して受け取った代金は、レジに入れて保管することになります。1日にどれだけの売上があったかを確認するには、営業終了後にレジの中の現金が開店前からどれだけ増えたかで把握することができます。

しかし、営業中に店主が私用でレジの中の現金を持ち出し、買い物をしたらどうなるでしょうか。当然、その分だけレジから現金が減っているので、営業終了後にレジの中の現金を数えても、その日の売上を把握することはできません。正しい売上を把握しようとするなら、店主であってもレジの中に入っている現金に手を付けることを許してはいけないのです。

つまり、企業会計が行われるためには、まず、企業の所有者と企業の財布が分離されている必要があるのです。財布を別にするということは、すなわち、企業会計は、企業の所有者から切り離した企業実体ごとに行われなければならないということになるのです。

株式会社の場合でみると、株主が出資した財産は、株式会社の財産となるので、この時点で、株主の財産と株式会社の財産は切り離されることになります。そして、株式会社の会計は、以後、株主の財産とは別に行われていきます。

継続企業の公準

継続企業の公準(ゴーイング・コンサーン)とは、企業実体の経済活動は将来にわたって継続するという考えです。簡単にいうと解散しないということです。

企業は設立されたら、必ず倒産や清算などによって解散する時がやってきます。解散する時期が設立時にわかっていれば、解散した時に財務諸表を作成し企業財産がどれだけ残っているのかを出資者に報告して、それを分配すれば良いのですが、しかし、解散時期は、企業の設立段階ではわかりません。

企業の解散時期がわからないとなると、株主や債権者といった利害関係者は、解散するまでその財政状態や経営成績を知ることができなくなってしまいます。つまり、企業の経済活動がうまくいっているのかどうかといった途中経過を知ることができないわけです。これでは、株主は不安になってしまいますし、債権者も、貸付金を回収できるかどうか不安になってしまいます。

そこで、このような利害関係者の不都合を解消するために企業の経済活動の結果を人為的に区切った期間ごとに報告する必要が出てきたわけです。なお、人為的に区切った期間は、一会計期間といわれます。

一会計期間の経営成績は、期間損益計算が行われて、収益、費用、利益が損益計算書という形で報告されます。また、一会計期間末の財政状態は、資産、負債、純資産が計算され、貸借対照表という形で報告されます。

このように会計期間を区切って損益計算書と貸借対照表が作成されるのは、継続企業の公準といった概念が前提となっているからです。なお、継続企業の公準は、企業会計における期間別計算の根拠となっていることから、会計期間の公準ともいわれることがあります。

貨幣的測定の公準

貨幣的測定の公準は、企業会計は貨幣額によって行われるという考え方です。

企業が扱っている商品や生産している製品は、各企業ごとに異なっています。ある企業が毛糸を生産していた場合、製品の計量は長さ(メートル)によって行われます。また、ある企業がコンクリートを生産していた場合、製品の計量は重さ(トン)によって行われます。このように企業ごとに製品の測定単位が異なっていたら、貸借対照表に計上される製品の残高は、長さ(メートル)で表示されたり、重さ(トン)で表示されたりと統一性が無くなってしまいます。

これでは、財務諸表利用者が、複数の企業の財務諸表を比較しようとしても、測定単位が不統一なため、比較が困難となります。また、同一の企業でも、商品は長さ(メートル)、土地は面積(平方メートル)、車両は台数で測定していたのでは、財務諸表に表示されている数値の理解が難しくなってしまいます。そこで、企業会計においては、統一された測定単位が必要となるのです。

現在の経済活動においては、貨幣が重要な役割を担っています。消費者が、お店で商品を購入するとき、代価として差し出すのは貨幣です。また、企業が商品を仕入れるときにその代価として支払うのも貨幣です。例え、長さや重さといった商品の測定単位が異なっていたとしても、経済価値を測る尺度は貨幣額で統一されているので、貨幣額を企業会計における測定単位として採用することは、財務諸表利用者にとって理解しやすいといった利点があります。

また、企業が獲得した利益は、債権者への利息、国や地方自治体への税金、株主への配当金として分配されます。これらはすべて貨幣によって支出されるので、利益の測定は、貨幣額を測定単位として用いるしか手段がありません。

このように企業の経済活動は、貨幣額で測定されるのがわかりやすいため、企業会計においては貨幣額で測定することが前提となっているのです。