企業会計の機能
企業会計には、情報提供機能と利害調整機能という2つの機能があります。これから企業の株式を購入しようと思っていたり資金の貸付を行おうとしている投資家、すでに企業に出資している株主、すでに企業に貸付をしている債権者といった利害関係者は、企業がどのような状況にあるのかといった情報を必要としますし、企業が獲得した利益がどのように分配されるのかに大きな関心を持っています。
これら利害関係者の求めに応じるために企業会計には、情報提供と利害調整という役割が期待されています。
情報提供機能
情報提供機能は、簡単にいうと、企業の現在の状況を利害関係者に報告する機能といえます。
これから企業に貸付を行おうとする場合、その企業がどれだけの資産を保有しており、どれだけの負債を負っているのかといった情報が必要になります。貸付をしようとしている額よりも多くの資産を保有していれば、将来、貸付金を確実に回収できると判断できます。しかし、資産が少なかったり、負債が多かったりすると、貸付金の回収が困難になるということが予想されます。
これから企業に出資しようと考えている投資家も同様に企業の財産の状況に関心を持ちます。また、企業に出資した資金の回収は、株式の売却を除けば企業が獲得した利益からの配当金の受取しかないため、今後、企業が安定的に利益を獲得できるかどうかを予測するための情報がなければ、投資すべきかどうかを判断することができません。他にも株主が、このまま株式を保有し続けるべきか売却すべきか判断するためにも、企業の財政状態や経営成績は重要な判断材料となります。
こういった投資のための意思決定に必要な情報を企業会計では、財務諸表によって提供しています。
財務諸表に記載される情報は、経営者が株主から出資を受けた企業財産の管理運用について報告する手段ともなります。企業財産は、株主から預かったものであるため、経営者は、これらの財産について株主の意向に沿うように管理し運用する必要があります。つまり、経営者は、経営活動を通じて受託した財産を増やす責任を負っているわけです。
もしも受託した財産を増やせなかったり、減らすことがあったら、財産を委託した株主は、その経営者の責任を追及し、場合によっては別の経営者に企業財産を委託することになるでしょう。経営者が企業の財政状態と経営成績を報告するということは、自らの受託責任を明らかにすることにもなることから、企業会計は受託責任の明確化といった機能も有しているといえます。
利害調整機能
利害調整機能は、企業を取り巻く利害関係者にどのように利益の分配を行うかを決定する機能のことです。
企業が獲得した利益は、従業員の給料、債権者の利息、国や地方自治体に納める税金、株主への配当という形で分配されます。
従業員、国や地方自治体、株主は、利益が多く計上されればされるほど、分配額が多くなるので、できるだけ利益がたくさん計上されることを期待します。
一方の債権者は、貸付時の契約段階で受け取れる利息が決定されているので、利益の多少に関心を持たないとも考えられます。しかし、給料や税金、配当といった形で多くの財産が企業外部に流出した場合、企業内部に残る財産が少なくなるので、貸付金の回収が難しくなる危険があります。そのため、債権者にとっては、できるだけ利益が少なめに計上された方が、企業財産の社外流出を防ぐことができるので、喜ばしいことといえます。
このように従業員、国や地方自治体、株主と債権者の間で利害が衝突することになります。
また、従業員に多くの給料や賞与が支給された場合、その分だけ利益が減少するので、国や自治体、株主との間で利害衝突が起こります。さらに国や自治体が課す税金が多ければ、株主が受け取る配当金が減るので、両者の間でも利害衝突が起こります。
企業を取り巻く利害関係者の間では、企業が獲得した利益の分配をめぐって、このような利害衝突が起こっています。これら利害関係者が納得できるように利益の分配を行う役割を企業会計は担っているのです。