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動態論と静態論

動態論は企業会計の目的を損益計算とする考え方で、静態論は企業会計の目的を財産計算とする考え方です。

動態論

動態論は、損益計算を目的とした考え方です。損益計算の方法には、期首と期末の貸借対照表を比較して純資産がどれだけ増加したかを把握する財産法もありますが、動態論においては、純資産の増加原因と減少原因を把握して損益計算を行う損益法が重視されます。

損益法で損益計算を行う場合、純資産の増減原因を日々記録し、それらの記録を集計する必要があります。つまり、帳簿記録が必要となるということです。動態論においては、日々の帳簿記録を基に損益計算が行われるため、財産計算の方法では誘導法と相性が良いという特徴があります。

また、動態論において作成される貸借対照表も損益計算にとって有用なものとなりやすい性格を有しています。貸借対照表に計上される資産は、企業が有しているプラスの財産を意味します。わかりやすくいうと、資産はお金に交換しうるものと考えることができます。しかし、動態論における貸借対照表は、そのような資産だけでなく損益計算という目的だけを持った科目も資産として計上されることがあります。

具体的には、資産の場合、繰延資産前払費用などの経過勘定項目を挙げることができますし、負債の場合、引当金未払費用などの経過勘定項目を挙げることができます。

資産の評価額についても、損益計算が重視されることから、評価時点の時価ではなく、資産の購入時の価額すなわち取得原価が用いられます。資産は売却された時に収益が確定しますので、損益計算を目的とするなら、売却前に資産を時価で評価するのは好ましくありません。なぜなら、原価と時価との差額が利益として損益計算書に計上されてしまい、正しい期間損益計算ができなくなるからです。そのため、動態論においては資産の評価に取得原価が用いられるのです。

このように動態論における貸借対照表は、損益計算を目的としている面があることから動的貸借対照表と呼ばれることがあります。

静態論

静態論は、財産計算を目的とした考え方です。つまり、期末に企業がどれだけの財産を保有しているかを重視する考え方です。

静態論においては、貸借対照表に計上される資産は、時価で表示されることになります。これは、期末に保有している資産を売却したらどれだけのお金に交換することができるのかが重視されるからです。

静態論の背景には、企業に資金を貸し付けている銀行などの債権者を保護しようという考え方があります。債権者にとって重要なことは、企業に貸し付けたお金が返済されることです。そのため、債権者の関心は、現在、債務者である企業がどれだけの財産を保有しているか、つまり、資産を売却したらどれだけのお金と交換できるのかということにあります。

財産計算の方法では、棚卸法と相性が良く、実地棚卸で確かめられた資産は時価で評価されます。

また、動態論において損益計算目的のためだけに貸借対照表に計上される資産は、売却してお金に交換することができないので、静態論では貸借対照表への計上が否定されます。同様に負債についても損益計算目的のものは、貸借対照表に計上されません。

なお、静態論における貸借対照表は静的貸借対照表と呼ばれることがあります。

現在の企業会計で動態論が用いられる理由

現在の企業会計では、動態論が主流となっています。その理由は、以下のように考えられます。

  1. 静態論は企業が現時点で解散した場合、その企業が保有している資産がどれだけの価額で売却できるかを把握することが目的となっています。しかし、現在の企業は長期継続的に経営活動を行っているため、一定時点での企業の解散価値を把握することに大した意味はないと考えられます。
  2. 企業が保有する資産には、すぐに売却価値を把握できるものもありますが、生産に必要な機械設備などは、時価を客観的に求めることが非常に困難で、実務的対応が難しい面があります。
  3. 資産を時価で評価した場合、取得原価との差額が利益として計上されます。利益は、株主や債権者、国などの利害関係者に分配されますが、資産を売却する前に計上した評価益には、いまだそれと同額の入金がない(資金的裏付けがない)ため、利害関係者への利益の分配が困難となります。

なお、動態論的会計思考に基づく会計方式は、取得原価主義会計と呼ばれています。

期間損益計算と財産計算のまとめ

これまで期間損益計算と財産計算について説明してきましたが、これらについては、明確に区分せずにほぼ同義とされることもあります。

  • 財産法=棚卸法=静態論
  • 損益法=誘導法=動態論

財産法と損益法は期間損益計算の方法で、棚卸法と誘導法は財産計算の方法ですが、これらを別々に論じることに大した意義がないという意見もあり、そういった考え方においては、財産法と棚卸法と静態論は同じもので、損益法と誘導法と動態論は同じものとして扱われます。

期間損益計算と財産計算を別々に論じることは学問的に興味深いことではありますが、実務においては大差ないので、それほど意識して使い分ける必要はないでしょう。


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