条件付発行可能潜在株式が存在する場合の潜在株式調整後1株当たり当期純利益の計算

ここでは、条件付発行可能潜在株式が存在する場合の潜在株式調整後1株当たり当期純利益の計算について、具体例を用いて解説します。

前提条件

前年度の合併に際し、x1年4月1日からx4年3月31日までの当期純利益の累計額が150,000,000円以上の場合、吸収合併消滅会社の旧株主に付与された新株予約権が行使可能となることが合意されています。

1株当たり当期純利益は、損益計算書上の当期純利益から普通株主に帰属しない金額を差し引いた普通株主に係る当期純利益を普通株式の期中平均株式数で除して計算します。

本事例では、普通株主に帰属しない金額は存在しないので、当期純利益200,000,000円から1株当たり当期純利益を算定します。

x1年4月1日からx4年3月31日の当期純利益の累計が150,000,000円以上の場合、吸収合併消滅会社の旧株主に付与された新株予約権が行使可能となることが合意されています。

x1年度の当期純利益が200,000,000円なので、x2年3月31日までに当期純利益の累計が150,000,000円以上となっており、条件を達成しています。

しかし、最終的な条件の判定がx4年3月31日なので、x2年3月31日時点では残りの期間に損失が計上されて条件が達成されなくなる可能性があるため、まだ条件を満たしているとは言えません。

よって、x2年3月31日には条件を満たしておらず、新株予約権を行使することはできないので、普通株式の期中平均株式数に含めません。

したがって、普通株式の期中平均株式数は5,000,000株です。

以下の計算より、1株当たり当期純利益は40.00円です。

新株予約権の行使価格は1,000円、期中平均株価は1,250円なので、新株予約権がすべて行使されたと仮定することにより算定した潜在株式調整後1株当たり当期純利益は、1株当たり当期純利益を下回るため、当該新株予約権は希薄化効果を有しています（1株当たり当期純利益に関する会計基準第24項）。

なお、潜在株式調整後1株当たり当期純利益は、以下の計算式で算定します。

本事例では、当期純利益調整額はないので、普通株式増加数を計算すれば、潜在株式調整後1株当たり当期純利益を求めることができます。

普通株式増加数は、希薄化効果を有する条件付発行可能潜在株式が期末までにその条件を満たしていなくても、期末を条件期間末としたときに当該条件を満たす場合には、期中平均株式数に加算して潜在株式調整後1株当たり当期純利益を算定します（1株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針第32項（2））。

本事例では、x4年3月31日が条件判定日ですが、x1年度の当期純利益が200,000,000円であり、x2年3月31日時点では当期純利益の累計150,000,000円以上の条件を満たしているため、新株予約権がすべて行使されたと仮定した場合の普通株式増加数を期中平均株式数に加算します。

新株予約権500,000個がすべて行使されたと仮定した場合、500,000株が株主に交付されます。行使価格が1,000円なので、払い込みを仮定した入金額は500,000,000円です。

次に払い込みを仮定した入金額500,000,000円で自己株式を取得したと仮定します。期中平均株価が1,250円なので、取得を仮定した自己株式数は400,000株になります。

500,000株のうち自己株式400,000株を差し引いた100,000株が新規に発行すると仮定した株式数になります。

以下より、潜在株式調整後1株当たり当期純利益は39.22円です。

潜在株式調整後1株当たり当期純利益
=200,000,000円/(5,000,000株+100,000株)
=200,000,000円/5,100,000株
=39.22円