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減損会計における共用資産の取扱い

共用資産減損の兆候がある場合に、減損損失を認識するかどうかの判定は、共用資産が関連する複数の資産または資産グループに共用資産を加えた、より大きな単位で行います(固定資産の減損に係る会計基準二 7.)。

共用資産の帳簿価額を当該共用資産に関連する資産または資産グループに合理的な基準で配分することができる場合には、共用資産の帳簿価額を各資産または資産グループに配分したうえで減損損失を認識するかどうかを判定することができます(同会計基準二 7.)。

共用資産を含むより大きな単位で認識の判定を行う場合

共用資産を含む、より大きな単位について減損損失を認識するかどうかを判定するに際しては、共用資産を含まない各資産または資産グループにおいて算定された減損損失控除前の帳簿価額に共用資産の帳簿価額を加えた金額と、割引前将来キャッシュ・フローの総額とを比較します(固定資産の減損に係る会計基準二 7.)。

共用資産に係る資産のグルーピングを、共用資産が関連する複数の資産または資産グループに共用資産を加えた、より大きな単位で行う場合、減損の兆候の把握、減損損失を認識するかどうかの判定および減損損失の測定は、まず、資産または資産グループごとに行い、その後、より大きな単位で行います(固定資産の減損に係る会計基準注解(注7))。

資産または資産グループごとに減損の兆候の把握、減損損失の認識の判定および減損損失の測定

減損損失を認識すべきであると判定された共用資産を含む、より大きな単位については、共用資産を含まない各資産または資産グループにおいて算定された減損損失控除前の帳簿価額に共用資産の帳簿価額を加えた金額を、より大きな単位の回収可能価額まで減額します(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第48項(4))。

共用資産を加えたより大きな単位で減損の兆候の把握、減損損失の認識の判定および減損損失の測定

共用資産に配分される減損損失が共用資産と正味売却価額の差額を超過する場合

共用資産を加えることによって算定される減損損失の増加額は、原則として共用資産に配分します(固定資産の減損に係る会計基準二 7.)。

共用資産に配分される減損損失が、共用資産の帳簿価額と正味売却価額の差額を超過することが明らかな場合には、当該超過額を合理的な基準により各資産または資産グループに配分します(固定資産の減損に係る会計基準注解(注8))。

各資産または資産グループの回収可能価額が容易に把握できる場合

各資産または資産グループの回収可能価額が容易に把握できる場合には、当該回収可能価額を下回る結果とならないように、当該超過額を、各資産または資産グループの帳簿価額と回収可能価額の差額の比率等により配分します(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第48項(5)①)。

各資産または資産グループの回収可能価額が容易に把握できない場合

各資産または資産グループの回収可能価額が容易に把握できない場合には、当該超過額を、各資産または資産グループの帳簿価額の比率等により配分します(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第48項(5)②)。

ただし、各資産または資産グループの一部の回収可能価額が容易に把握できる場合には、当該回収可能価額を下回る結果とならないように、合理的な基準により、回収可能価額が容易に把握できない構成資産に減損損失を配分することができます(同適用指針第48項(5)②ただし書き)。



共用資産の帳簿価額を各資産または資産グループに配分

一般に、共用資産の帳簿価額を合理的な基準で各資産または資産グループに配分することは困難であると考えられるため、共用資産を含む、より大きな単位について減損損失を認識するかどうかを判定する方法が原則とされます(固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書四 2.(7)②)。

ただし、共用資産の帳簿価額を当該共用資産に関連する資産または資産グループに合理的な基準で配分することができる場合には、共用資産の帳簿価額を各資産または資産グループに配分したうえで減損損失を認識することができます。この場合に、資産グループについて認識された減損損失は、帳簿価額に基づく比例配分等の合理的な方法により、共用資産の配分額を含む当該資産グループの各構成資産に配分します(固定資産の減損に係る会計基準二 7.)。

当期に当該配分方法を採用した場合、翌期以降の会計期間においても同じ方法を採用する必要があります。ただし、以下のような事実関係の変化がある場合には、この限りではありません(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第49項(2))。


  1. 資産のグルーピングの変更
  2. 主要な資産の変更
  3. 資産グループ内での設備の増強や大規模な処分
  4. 資産グループ内の構成資産の経済的残存使用年数の変更
  5. 共用資産自体の設備の増強や経済的残存使用年数の変更

なお、類似の資産または資産グループにおいては、同じ配分方法を採用する必要があります(同適用指針第49項(3))。

帳簿価額に基づく比例配分以外の合理的な配分方法

共用資産の帳簿価額を各資産または資産グループに配分して管理会計を行っている場合や、共用資産が各資産または資産グループの将来キャッシュ・フローの生成に密接に関連し、その寄与する度合いとの間に強い相関関係を持つ合理的な配賦基準が存在する場合には、共用資産の帳簿価額を当該共用資産に関連する各資産または資産グループに当該合理的な配賦基準で配分することができます(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第49項(1))。

減損損失の認識の判定および測定

共用資産の帳簿価額を各資産または資産グループに配分する方法を採用する場合には、配分された各資産または資産グループに減損の兆候があるときに、以下のように減損損失の認識の判定および測定を行います(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第50項)。


  1. 共用資産の帳簿価額を、当該共用資産に関連する各資産または資産グループに配分したうえで減損損失を認識するかどうかを判定する。
  2. 各資産または資産グループの帳簿価額に共用資産の帳簿価額を配分した額を加えた金額を回収可能価額まで減額する。
  3. 共用資産の帳簿価額を配分した各資産グループにおいて認識された減損損失は、帳簿価額に基づく比例配分等の合理的な方法により、共用資産の配分額を含む当該資産グループの各構成資産に配分する。