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減損処理後の会計処理

減損処理を行った資産については、減損損失を控除した帳簿価額に基づき減価償却を行います(固定資産の減損に係る会計基準三 1.)。

なお、減損損失については、戻入れを行いません(同会計基準三 2.)。

減損処理後の減価償却

減損処理を行った資産については、減損損失を控除した帳簿価額から残存価額を控除した金額を残存耐用年数に基づき、企業が採用している減価償却の方法にしたがって、規則的、合理的に配分します(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第55項)。

なお、残存価額は、耐用年数到来時において予想される当該資産の正味売却価額となりますが、減価償却費の計算においては現在時点まで割り引かれないことに留意する必要があります(同適用指針第135項なお書き)。

また、残存価額がゼロと見積られた場合、残存価額を10パーセントとして定率法の償却率を計算する方法を採用することはできません。この場合には、残存価額を10パーセントとして計算した金額に簡便的に9分の10を乗じた額を各期の減価償却費として計上する方法も認められます(同適用指針第135項また書き)。

販売目的で保有するために流動資産に振り替える場合

従来、自社使用または賃貸事業用目的のために保有していた固定資産を、減損処理後、合理的な理由に基づき、販売目的で保有することに変更した場合には、当該固定資産の帳簿価額を固定資産から流動資産に振り替えることになります(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第136項)。この場合には、減価償却を行いません。

上記以外の場合には、減損処理後に処分が予定されていても、残存価額まで減価償却を行う必要があります(同適用指針第55項また書き)。

なお、販売目的で保有することとは、当該資産の売買やあっ旋を業とする企業が当該営業活動を遂行するために保有することを指すと考えられます(同適用指針第136項なお書き)。

処分がすぐに予定されている資産について減損処理が行われた場合、回収可能価額は通常、売却による回収額である正味売却価額となるため、減損処理後の帳簿価額と残存価額は一致していると考えられます。しかし、減損処理後、一定期間経過後に処分する予定であるときのように、減損処理後の帳簿価額が残存価額と異なるときには、処分が予定されている場合でも、残存価額まで減価償却を行う必要があります(同適用指針第137項)。

減損処理後の遊休資産

減損処理を行った遊休資産について、減損処理後の減価償却費は、原 則として、営業外費用として処理します(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第56項)。

なお、減損処理を行わなかった遊休資産の減価償却費も、原則として、営業外費用として処理します(同適用指針第56項なお書き)。

減損損失の戻入れ

減損処理は、固定資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態が相当程度に確実な場合に限って、回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理であり、直接的に貸借対照表価額を求めるものではないと考えられます。したがって、期末のみならず、期中において減損処理が行われる場合があります。減価償却は、減損損失を控除した帳簿価額に基づき行われ、減価償却後の未償却残高が貸借対照表価額となります(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第134項)。

このような考え方によると、減損損失の戻入れを行う必要はありません。また、戻入れは事務的負担を増大させるおそれがあることなどからも、減損損失の戻入れは行わないこととされています(固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書四 3.(2))。

中間会計期間における取扱い

年度決算では、中間会計期間を含む事業年度全体を対象として改めて会計処理が行われます。そのため、中間会計期間に減損処理を行った資産については、いったん減損損失を戻し入れて、再度、年度末に減損損失の認識の判定を行う必要があるように思われます。

しかし、減損処理は、固定資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態が相当程度に確実な場合に限って、回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理であり、棚卸資産の評価基準としての低価基準等とは異なり、直接的に貸借対照表価額を求めるものではありません。

したがって、中間会計期間において減損処理を行った場合でも、年度決算までに資産または資産グループに新たな減損の兆候があり追加的に減損損失を認識すべきであると判定されるときを除いて、年度決算において、中間会計期間を含む事業年度全体を対象として改めて会計処理は行いません(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第63項および第145項)。