HOME > 各論 > 減損会計 >

 

減損会計における使用価値の算定に際して用いられる割引率

使用価値の算定に際して用いられる割引率は、貨幣の時間価値を反映した税引前の利率とします(固定資産の減損に係る会計基準二 5.)。

資産または資産グループに係る将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクが、将来キャッシュ・フローの見積りに反映されていない場合には、割引率に反映させます。

将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクを将来キャッシュ・フローに反映させている場合は、割引率は貨幣の時間価値だけを反映させた無リスクの割引率となります。一方、当該リスクを将来キャッシュ・フローに反映させていない場合には、割引率に反映させることになり、その場合の割引率は貨幣の時間価値と将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクの両方を反映させたものとなります(固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書四 2.(5))。

減損損失の測定時点の割引率を用いる

減損損失の測定にあたり、使用価値を算定する際に用いられる割引率は、減損損失の測定時点の割引率を用い、原則として、翌期以降の会計期間においても同一の方法により算定されます。また、将来キャッシュ・フローが税引前の数値であることに対応して、割引率も税引前の数値を用いる必要があります(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第43項)。

減損処理が、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合に、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理であることから、回収可能価額のうち使用価値を算定する場合には、現在から将来にわたる回収可能性を反映させる必要があります。このため、減損損失を測定する際に算定される使用価値は、今後生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローを、現在時点の割引率を用いて割り引いた現在価値とすることが適当と考えられます(同適用指針第124項)。

単一の割引率

使用価値を算定する際に用いられる割引率は、実務上、単一の割引率を使用すると考えられます(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第44項)。

しかし、将来キャッシュ・フローが見積られる期間のうち、現在時点から近い場合と遠い場合では、将来キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクや貨幣の時間価値が大きく異なることもあります。そのため、資産または資産グループの合理的な使用計画等により、合理的で説明可能な仮定および予測に基づき当該リスクや貨幣の時間価値が相違するため、異なる期間について異なる割引率を見積る場合には、当該割引率を用いることができます(同適用指針第44項および第125項)。

将来キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスク

資産または資産グループに係る将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクについて、将来キャッシュ・フローの見積りに反映されていない場合、使用価値の算定に際して用いられる割引率は、貨幣の時間価値と将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクの両方を反映したものであり、以下のものまたはこれらを総合的に勘案したものとなります(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第45項)。


  1. 当該企業における当該資産または資産グループに固有のリスクを反映した収益率。
  2. 当該企業に要求される資本コスト
  3. 当該資産または資産グループに類似した資産または資産グループに固有のリスクを反映した市場平均と考えられる合理的な収益率。
  4. 当該資産または資産グループのみを裏付け(ノンリコース)として大部分の資金調達を行ったときに適用されると合理的に見積られる利率。

当該企業における当該資産または資産グループに固有のリスクを反映した収益率

企業は、内部管理目的の経営資料や使用計画等、企業が用いている内部の情報に基づき、当該資産または資産グループに係る収益率を算定します(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第45項(1))。

例えば、類似した設備投資の意思決定を継続的にハードル・レートを用いて行っている場合や、事業部別資本コストを活用している場合には、これらを基礎として、経営環境などの企業の外部要因に関する情報や企業が用いている内部の情報に照らし修正を加え、当該収益率を計算することが考えられます(同適用指針第126項)。

当該企業に要求される資本コスト

資本コストは、借入資本コストと自己資本コストを加重平均した資本コストを用いることが適当と考えられます(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第45項(2))。

借入資本の比率が極めて高い企業や、大型プロジェクトであって、そのほとんどを借入金で賄っているような場合には追加借入利子率を割引率として用いることが考えられます。

しかし、自己資本コストは、借入資本コストと比較して、ビジネス・リスクや財務リスク等のリスクを加味した分だけ高くなるので、追加借入利子率を割引率とした場合、借入資本コストと自己資本コストを加重平均した資本コストよりも低くなるといった不都合が生じます。

そのため、追加借入利子率は、当該企業における当該資産に固有のリスクを反映した収益率より著しく低くなることは明らかであるため、原則として、用いることはできないと考えられます(同適用指針第127項)。

ただし、当該資産または資産グループのみを裏付け(ノンリコース)として大部分の資金調達を行ったときに適用されると合理的に見積られる利率が得られる場合には、当該利率を用いて割引率を算定することができます(同適用指針第45項(4))。

固有のリスクを反映した市場平均と考えられる合理的な収益率

類似の賃貸用不動産における還元利回りなどのように当該資産または資産グループに類似した資産または資産グループに固有のリスクを反映した市場平均と考えられる合理的な収益率が得られる場合には、当該収益率を割引率として用いることが考えられます(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第126項また書き)。

また、当該資産または資産グループのみを裏付け(ノンリコース)として大部分の資金調達を行ったときに適用されると合理的に見積られる利率が得られる場合も、当該利子率を割引率として用いることが考えられます。

貨幣の時間価値だけを反映した無リスクの割引率

資産または資産グループに係る将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクについて、将来キャッシュ・フローの見積りに反映させた場合には、使用価値の算定に際して用いられる割引率は、貨幣の時間価値だけを反映した無リスクの割引率となります。したがって、この場合には、将来キャッシュ・フローが得られるまでの期間に対応した国債の利回りを割引率として用いることとなります(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第46項)。

連結財務諸表に用いられる割引率

連結財務諸表において、連結の見地から、個別財務諸表において用いられた資産のグルーピングの単位が見直された場合、原則として、使用価値の算定に際して用いられる割引率も資産のグルーピングに応じて見直されることとなります(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第47項)。

これは、個別財務諸表における資産グループと連結財務諸表における資産グループとが異なる以上、それら資産グループの収益率等も異なることになると考えられるからです。また、そのように資産のグルーピングの単位が見直される場合は、管理会計上の区分や投資の意思決定を行う単位の設定等が複数の連結会社を対象に行われていることが必要であるため、当該単位で収益率等を把握している場合が多いと考えられます。このため、使用価値の算定に際して用いられる割引率も資産のグルーピングに応じて見直すことが適当であるといえます(同適用指針第128項)。

ただし、個別財務諸表において当該企業(親会社)の資本コストを用いており、連結財務諸表上、それが明らかに不合理である場合(例えば、見直し後の資産グループの中で、子会社の資産が大部分を占める場合など)を除いて、親会社で用いた資本コストを割引率として用いることも考えられます(同適用指針第128項ただし書き)。


PR

電子契約を始めるならfreeeサイン
税理士ドットコムで最適な税理士選び