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業務的意思決定

業務的意思決定は、現有設備を所与とした上で、個々の事象についてなされる意思決定をいいます。

意思決定の主体は、ミドル・マネジメントやロワー・マネジメントであり、その効果は比較的短期に止まります。

経営計画は、構造計画(基本計画)と業務計画、期間計画と個別計画に区分できます。

業務的意思決定は、業務計画としての個別計画と同義です。ただし、業務的意思決定は、構造計画の枠組みの中で業務期間計画としての予算編成の過程で行われることが多いことから、完全に期間計画と切り離して考えることはできません。

業務的意思決定の事例

業務的意思決定には、以下のような事例があります。

  1. 自製か購入か
  2. 新製品の追加または旧製品の廃棄
  3. 加工か販売か
  4. 賃借りか自社営業か
  5. 受注か拒否か

自製か購入か

これまで自社で製造していた部品について、このまま自製すべきか、それとも外部から購入すべきかを決定するのが具体的な事例です。

原価情報としては、予算による全部原価情報と差額原価情報があります。

全部原価情報には、減価償却費などの埋没原価が含まれることから意思決定を誤る危険があります。そのため、差額原価情報を使うのが適切です。


新製品の追加または旧製品の廃棄

現有設備を維持したまま新製品を追加すべきかどうか、または旧製品を廃棄するかどうかの業務的意思決定が具体的な事例です。

新製品を追加する場合は、その加工によって新たに発生する変動費が差額原価となりますが、新製品の追加によって新たに発生する固定費も考慮しなければなりません。

旧製品の廃棄では、それにより節約できる変動費が差額原価となりますが、旧製品の製造に使っていた設備の減価償却費は埋没原価なので考慮してはいけません。


加工か販売か

自社で製造している製品を半製品の状態で販売すべきか、最終製品まで加工して販売すべきかが具体的な事例です。

現有設備において、加工か販売か、どちらが有利になるかの意思決定では、追加加工によって得られる収益の増分が、全ての付加的原価を上回っているかを検討しなければなりません。

そして、追加加工が貢献利益を増加させるかどうかを評価します。

その際、販売によって得られる利益と追加加工によって得られる利益を比較することになるので、機会原価についても考慮しなければなりません。


賃借りか自社営業か

工場などを自社で持ち続けるか、工場などを閉鎖して賃借りするかが具体的な事例です。

賃借りすれば、賃借料が必要になりますが、一方で、自社営業の継続で必要となる保険料、修繕費、資本に関わる利子が不要となります。

賃借りか自社営業かの意思決定では、何が回避可能原価であり、何が回避不能原価であるのかを明らかにしなければなりません。

現有設備を使用している場合は、その減価償却費は埋没原価となります。ただし、設備の売却があれば、その売却収入は考慮しなければなりません。


受注か拒否か

新たに製品の注文があった場合に引き受けるか拒否するかが具体的な事例です。

受注が有利か不利かの意思決定では、平均単位原価の比較は意思決定を誤る危険があります。操業度の変化により固定製造間接費の配賦額が変わること、判断資料の中に埋没原価が含まれてしまうおそれがあることが、その理由です。

受注か拒否かの意思決定では、受注した場合の貢献利益を計算し、それが正(+)であれば、受注を決定することが多いです。


上記の他にも、業務的意思決定には、工場の継続か閉鎖か、特定地域での営業継続か撤退かなどの意思決定もあります。